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「ハロのマウスが作りたかった」 変わり種USBメモリ作るアクテブライズ

» 2009年07月21日 07時00分 公開
[小笠原由依,ITmedia]

 「ハロのマウスがあったら面白いよな。売れるんじゃない? 丸いマウスは珍しいし」

 猫耳型やわら人形型など、変わり種USBメモリで知られるベンチャー企業・アクテブライズ起業のきっかけは、高橋佳樹社長(38)のこんな思い付きだった。

 電子部品メーカーで働いていたが、「機動戦士ガンダム」に登場するロボット「ハロ」型の丸いマウスを作りたいと会社を辞め、2005年1月、地元の群馬県高崎市にアクテブライズを設立した。

 球体のハロをそのままマウスにするため、マウスを傾けるだけでカーソル移動できる「空間方向感知システム」の回路を開発し、基板を製作。おもちゃメーカーに話を持ちかけたが、いい返事はもらえない。基板は1つ5000円。安いマウスが多かった当時、採用してもらうことはできなかった。

photo ダルマウス

 ハロは無理でも、この回路を生かして丸いマウスを作れないか――高崎といえば、全国シェア8割を誇るだるまの名産地。知人に職人がいたこともあり、だるまの中に回路を入れ、だるま型マウス「ダルマウス」(7878円)を作った。

 ダルマウスはこれまでに約800個を売り上げた。「全く売れないと思っていたのに、案外売れるものなんだなぁ」と思い、“丸いマウス”の開発と販売を本格化。ツチノコやブタ、ネズミをモチーフにした張り子の人形をマウスにしてみたり、木製やステンレス製の球体をマウスにするなど、製品を増やしてきた。

 今年1月からはUSBメモリの開発も始めた。猫耳や猫のしっぽ、ちりめん細工やわら人形など、ほかのメーカーではなかなか見られないデザインのUSBメモリを販売している。


 USBメモリにも手を広げたきっかけは、昨年の9月のリーマンショックに端を発する不況だ。起業当初から行っていたPCの組み立て業務の受注が減り、「先が見えなくなった」という。

 マウス開発だけでは心もとない。「新しく何かを見つけなければ」――商品ラインアップを拡充するためにも、比較的製造が簡単なUSBメモリの開発を始めた。

“見た目重視”の製品開発 「わら人形USB」のきっかけは

photo ディスプレイに設置できる猫の耳型USBメモリも

 「製品開発のときには、PCに挿さっているときの見た目を重視する」という。ちりめん細工のネコやカエルのUSBメモリー、“マウス風”の「Mouseの皮を被ったMemory」など、ぱっと目にとまる製品が多い。


photo 猫関連の製品が多いのは「猫関連の製品への反響が大きかったから」。特に猫好きだからというわけではないらしい

 最も反響が大きかったのは、「ネコのしっぽUSBメモリー」で、700〜800個程度を販売した。その名の通り猫のしっぽそっくりのデザインで、挿すとまるでPCからしっぽが生えているように見える。キツネやサルなど、ほかの動物のしっぽ型メモリも好評だ。

 アイデアは、「社員同士で話をしている時や、出歩いている時に、ふと浮かんだものが多い」という。アイデア出しの担当者が決まっているわけではなく、5人の社員全員がアイデアを出し、良いものを採用する。

photo 「わら人形USB」

 外出中にちょっとしたひらめきを得ることも。同社の周囲には一面に田んぼが広がり、農家も多いが、社員の1人が農家のわきに積まれたわらを見てふと思い付いたのが、装飾用シール付き「わら人形USB」だ。

 「わら人形そのままのUSBメモリだとあまりに怖かった」ので、頭に大きめのキャップを付けてわら人形っぽさをやや軽減。装飾用シールも当初は「呪」という文字が書かれたものしか用意していなかったが、「怖いので」、「祝」や「爆」「笑」などを追加したという。

 ボツになるアイデアもある。猫の手が2Gバイトのメモリを握っている「にぎにぎ(2G2G)USBメモリ」はボツネタから生まれた製品。「肉球が付いた猫の手のUSBメモリを作りたかったが、肉球にいい素材が見付からなかった。握った手の形にしてしまえ!」と猫の手を握らせ、“肉球不要”にした。

 「どんな製品が“当たる”かと聞かれても全く分からない。とにかく出してみるしかない。ただ、出す製品は、面白くないといけない」――同社は、面白いものを出してきた自負を胸に今後も、インパクトを重視しながら製品開発を進めていく。

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