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新聞協会など、日本版フェアユースに反対 「Webページの無断印刷は被害甚大」

» 2010年01月20日 20時51分 公開
[ITmedia]

 日本新聞協会や日本雑誌協会など6団体は1月20日、著作権法上の権利制限規定、いわゆる「日本版フェアユース」導入に反対する意見書(PDF)を、文化庁の審議会の委員あてに提出した。

 フェアユース導入に伴い、私的複製を超えた範囲で新聞や出版物を掲載したWebページの無断印刷が可能になれば、新聞社や出版社は甚大な被害を被り、ネット上の良質なコンテンツの危機につながるとしている。

 意見書は、両協会と、日本文芸家協会、日本書籍出版協会、学術著作権協会、日本写真著作権協会の連名。文化庁でフェアユース問題を議論している文化審議会法制問題小委員会の委員にあてている。

 意見書では、「何がフェアかの線引きがあいまいなままフェアユース導入されれば、本来はフェアではない複製が広まり、いたずらに権利者と利用者間の争いを増大させる」と指摘する。

 小委員会でのフェアユースの議論は「特定のビジネスに便宜を図ることが目的になっている」と主張。「一部のビジネスの発展のために既存の著作権者や出版権者の権利制限を前提にすることは、著作権法の本来の目的をあまりに軽んじている」とし、「良質な出版物などの発行の抑制につながり、日本文化の将来にとって障害になることは明らか」としている。

 特に、新聞社や出版社のWebページ印刷が権利制限の対象となった場合の問題を指摘。新聞や出版物の無料Web公開は「本来、印刷媒体として発行され、別途販売されるものや、広告収入・効果を目的としたもの」であり、「読者が私的利用の範囲を超えて許諾なく印刷すると、印刷媒体を購入する必要がなくなり、新聞社・出版社は大きな影響を被る」としている。

 「日本複写権センター」など企業内で複製された著作物の使用料を集める3団体の使用料収入は年間10億円を超えているという。新聞各社の記事利用許諾は全国紙5紙だけで1万5000件を超えるとも推定、「Webページが許諾なく無料で印刷されることになれば、許諾システムで得られている権利者の収入は著しく損なわれる」と危ぐしている。

 さらに「質の高いコンテンツには多大な労力とコストがかかるのが当然。コストをまかなうための事業に損害が生じれば、コンテンツを作る意欲は衰え、有用で貴重な情報が無料のWebページから消えていく恐れもある。デジタル文化の発展を抑制するだけでなく、産業振興そのものを抑えることにもなりかねない」とする。

 フェアユース導入は政府が進める知財立国にも反すると主張。「文化に与える混乱と損失は甚大」とし、「より多くの国民のコンセンサスを得ながら慎重に議論を進めてほしい」としている。

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