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Adobe CEO「Appleはクローズドを選択した」 iPhone向けFlashアプリ変換ツールへの投資中止

» 2010年04月22日 16時04分 公開
[ITmedia]
photo ナラヤンCEO

 米Adobe Systemsのシャンタヌ・ナラヤンCEOら同社トップがそろって来日し、4月22日都内で会見した。iPhone向けFlashをめぐる米Appleとの確執について、ナラヤンCEOは「Appleはクローズドを選択した。われわれはオープンなパートナーと協業していきたい」と話し、GoogleのAndroidなどを重視していく方針を述べた。Flash製品などを含むクリエイティブ製品部門のトップは、FlashアプリをiPhone向けに変換するツールについて、投資の中止を明言した(Adobe、iPhone向けFlashを断念 Androidにシフトへ)。

 Appleは先日、iPhone OS SDKの利用規約を変更。新たな利用規約は、変換・互換のためのレイヤーやツールを使ったアプリを禁じたため、FlashアプリをiPhoneアプリに変換するFlash CS5の「Packager for iPhone」機能は事実上、利用不可能になる。

 ナラヤンCEOは「マルチスクリーン・マルチデバイスへの期待が高まっている。全てのコンテンツ企業が求めているのはマルチデバイス化だ」と話す。ポール・ワイスコフ コーポレートデベロップメント担当上級副社長は、Flashは「制作者が1つコンテンツを作れば、最も多くの機器で活用できる」というコンテンツのマルチデバイス化を容易に実現できるとし、「FlashはAdobeだけではなく、ユーザーにとっても重要だ」という。

photo Flashによるマルチデバイス化を掲げるスライド。Macはあるが……

 「マルチデバイスによる共通体験は、業界全体が取り組むことで実現できる」と話すワイスコフ上級副社長は、iPhoneのFlash対応を拒み続けるAppleの姿勢を「プラットフォームをクローズドにし、パブリッシャーによる配信を難しくし、エンドユーザーの選択肢を狭める」と批判する。

 AdobeはFlash制作ツールの最新版となる「CS5」を5月28日に発売する。ジョン・ロイアコノ クリエイティブソリューション事業部門担当上級副社長は、Flash CS5にPackager for iPhoneを含む形で発売するとした上で「Packager for iPhoneへの今後の投資はしない」と述べた。

 一方、今後リリースするFlash Player 10.1とAIR 2.0はスマートフォンへの対応を予定しており、Android向けではGoogleと密接に協力しながら開発していることを明らかにしている。またナラヤンCEOは、年内に登場する複数の新端末がFlashに対応する予定だと話した。

photophoto Flashの進化とFlash Player 10.1、AIR 2.0の概要

photo CEOを始めとする同社トップが勢ぞろいして経営方針を説明する機会は世界初という

 HTML5について、ナラヤンCEOは「Adobeはオーサリング環境をあらゆるフォーマットに対して提供する。Creative SuiteはHTMLをサポートしており、Flashとも共存する」と話す。「HTMLの進化は歓迎する」と述べるとともに、「動画、3Dゲームなど、Flashのイノベーションも進めていく」という。

 Omniture共同創業者で、Adobeによる買収で同社に入ったジャシュ・ジェイムズ オムニチュアビジネスユニット担当上級副社長はこう述べた。「Appleがクローズドなのは明らかによくないが、われわれにとっては追い風になる。閉鎖的なシステムは短期ではいいかもしれないが、長期的にはわれわれに資するだろう」

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