Flashはオープンではなく、信頼性が低く、バッテリーを消耗する――Appleのスティーブ・ジョブズCEOが、iPhoneやiPadでFlashをサポートしない理由を説明している。
AppleとAdobeは長年のパートナーだったが、近年はFlashのサポートをめぐり対立している。最近ではAppleがiPhone SDKの規約を変更したことで、FlashアプリをiPhoneアプリに変換するAdobeのツールが利用できなくなった。Adobeはこれを受けてiPhone向けのFlashを断念して、GoogleのAndroidにシフトする意向を示した。
業界関係者の中には「AppleがFlashに対応しないのは、App Storeを守るためのビジネス上の決断」とみる向きもあるが、ジョブズ氏は「技術的な理由によるものだ」と主張。さらに「AppleはクローズドでFlashはオープン」というAdobeの主張に対し、「実際は逆だ」と反論している。
「Flash製品は100%プロプライエタリだ。Adobeからしか提供されていないし、Adobeだけが今後の改良や価格設定などの権限を持っている」とジョブズ氏は今回の声明で述べている。「Flashは広く使われているが、それはオープンということではない。Adobeが完全にコントロールしており、Adobeだけが提供しているからだ。どう定義しても、Flashはクローズドなシステムだ」
これに対して、AppleはHTML5やJavaScriptなどのオープンなWeb標準を採用し、WebKitなどオープンな技術を提供していると同氏は主張している。また、「iPhoneはFlashをサポートしていないのでWebをフルに体験できない」というAdobeの批判に対しては、「ほとんどのFlashビデオがH.264などのフォーマットでも提供されており、iPhoneで視聴できる」と反論している。
またジョブズ氏は、Flashで多数の脆弱性が見つかっていること、Macがクラッシュするナンバーワンの理由はFlashであることなどセキュリティと信頼性の問題も挙げている。Flashがバッテリーを消費することやタッチ操作に対応しないことも、サポートしない理由だとしている。
さらに、一番重要な理由は、Adobeが開発者にFlashを使ってiPhoneアプリを作らせようとしていることにあると同氏は言う。開発者がAdobeのようなサードパーティーの開発ツールに依存すれば、iPhone OSの新機能をアプリ開発に利用できるかどうか、いつ利用できるかがサードパーティーによって決定されてしまうと同氏は主張している。特にクロスプラットフォームツールでは各種プラットフォームの「最小公分母」の機能しか提供されず、「開発者がAppleの最新技術を利用できない状況は受け入れられない」という。
「FlashはPCとマウスの時代に作られた」が、モバイル時代は省電力、タッチ操作、オープンWeb標準が重要であり、「Flashはそのいずれにおいても及第点に達していない」と同氏は言う。
また同氏は「現在もAppleとAdobeはクリエイティブ職の顧客向けの製品――MacユーザーはAdobeのCreative Suite製品の約半分を購入している――で協力しているが、それ以外についてはほとんど共通の関心はない」と、MacではAdobeとの提携は続くとしつつも、ほかの分野に関しては決別とも取れる発言をしている。
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