米IBMのスーパーコンピュータ「Watson」は、米クイズ番組「Jeopardy!(ジョパディ!)」でデビューする準備を整えている。
IBMは昨年、自然言語能力を備えたコンピュータWatsonを発表した。Watsonは直接的に求められた情報を見つけることができる(Googleの検索エンジンと同様の機能)だけでなく、巨大な知識データベースを素早く検索し、Jeopardy!で出題されるようなタイプの質問に回答するのに必要な関連付けを行うことができる。Jeopardy!では、意味があいまいな質問や、語呂合わせや謎かけなどが含まれる質問が出題されることが多い。
IBMのスーパーコンピュータ「Blue Gene」は1997年、コンピュータ対人間のチェス対戦で世界チャンピオンのガルリ・カスパロフ氏を破り、世間の注目を集めた。そして同社は昨年、今度はWatsonがJeopardy!に出場する準備を進めていることを明らかにした。New York Timesの報道によれば、これは今秋にも実現する可能性があるようだ。
同記事によると、IBMはこの数カ月、ニューヨーク州ホーソーンにある同社の研究施設において、Jeopardy!の以前の出場者を相手にJeopardy!の疑似対戦を何度か実施したらしい。
この対戦ではWatsonが勝った試合もあれば負けた試合もあるが、Jeopardy!のプロデューサーは、Watsonを同番組で好成績を収めた元出場者とテレビで対戦させる考えだ。
この対戦は面白い娯楽ショーになりそうだが、IBMによると、3年以上にわたって開発が続けられてきたWatsonは、ビジネス分野でも大きな活躍を期待できるという。例えば、企業は求める情報を簡単に素早く見つけ出せるようになる。GoogleやBingに検索要求を送信し、求めている情報に合致するドキュメントのリストを表示させるよりも、Watsonのような高度な質問応答マシンを利用すれば、自然言語を使った質問に基づいて情報を検索することが可能になる。
New York Timesの記事によると、数社のIT企業が質問応答マシンの開発を進めているが、これらのシステムの多くは、人間があらゆる知識をコンピュータに手作業で入力し、この情報データベース内でリンクを作成することによって、コンピュータに関連性を教え込むというものだ。
IBMはこの10年間、こういった課題を克服するために、コンピュータの高性能化と膨大なデータのデジタル化という2つのトレンドを利用するのに成功した。その結果、人間が手作業で情報を入力する必要がなくなったという。
IBM研究所を統括するジョン・ケリー氏によると、同社は向こう2年以内にWatsonの商用版の販売を開始する可能性がある。同社では、医療、小売り、運輸などの個別分野向けにカスタマイズできるモデルを計画しているという。
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