米Googleと米Verizon Communicationsは8月9日、ネット中立性の実現を目指した共同提案を発表した。米議会がオープンインターネット政策を策定する上で、たたき台として使える立法の枠組みになるとしている。この案は固定回線におけるトラフィック差別を禁じる一方で、ワイヤレス通信を対象外としており、一部では懸念の声が上がっている。
特定のユーザーやサービスに対しトラフィックを規制するといった差別的扱いを禁じる「ネット中立性」については、米連邦通信委員会(FCC)がルール作りを進めており、通信会社と非公開の協議を行ってきた。しかし、妥協点を見いだせずに話し合いを打ち切ったと報じられている。その一方でGoogleとVerizonは独自にこの問題について協議してきた。
両社の提案では、消費者が好きなコンテンツにアクセスし、アプリケーションやサービスを使えるようにすることや、ブロードバンドISPが合法なコンテンツを差別する(コンテンツを遮断したり、金をもらって特定コンテンツを優先配信するなど)のを禁止することを唱えている。消費者が自分の接続状況を知ることができるよう、透明性についてのルール作りも提案している。
ただしこの案には懸念を呼んでいる点もある。米消費者団体Consumer WatchdogはGoogleとVerizonの共同提案には2つの根本的な欠点があると指摘している。
1つは、両社が「ブロードバンドインフラを革新のプラットフォームとする」ことを唱え、ISPが従来の接続サービスや動画サービスに加えて、付加的な差別化のためのサービスを提供するのを認めるよう求めていること。Consumer Watchdogは、これは「インターネットに2層構造を作り出す」としている。「公共のインターネット」のほかに、ISPが新しいプレミアムサービスを提供していいことになるため、「いつまで重要なものを公共のインターネットで手に入れられるだろうか?」と疑問を呈している。
もう1つは、ワイヤレスブロードバンドがこの案の対象外とされていることだ。両社は、ワイヤレス分野は固定回線とは異なり、競争が激しく急速に変化しているためと説明している。Consumer Watchdogは「モバイルがインターネットの未来であることは皆が同意している。ワイヤレスブロードバンドでデータの差別的扱いを許すことは、インターネットの未来を台無しにする」と批判している。
FCCはGoogleとVerizonの提案について、「この発表が議論を前進させると主張する人もいるだろうが、これは多くの問題の1つだ」と述べている。「FCCのブロードバンドへの権限を重ねて主張し、オープンなインターネットを恒久的に保証し、大企業の利益よりも消費者の利益を優先するる決断を進めるときだ」
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