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新型iPod touchはビジネスに進出するか?

» 2010年09月08日 07時50分 公開
[Nicholas Kolakowski,eWEEK]
eWEEK

 米Appleのスティーブ・ジョブズCEOは9月1日にサンフランシスコのイベントで、多数の新製品を発表した。中でも、毎年の恒例行事となった新型iPodの発表にはかなりの時間を割いた。特に、刷新版のiPod touch――ジョブズ氏が「電話のない」iPhoneと冗談を飛ばした――には、テレビ電話機能「FaceTime」や高解像度のRetinaディスプレイなど、既にiPhone 4にある多数の機能が盛り込まれた。

 だがこうした機能が加わったことで、従来最も消費者向けだったiPod touchが、企業において大きな役割を担えるようになるだろうか?

 この疑問は、Appleの最新製品の成否を左右するものではないかもしれないが、一部の企業がこの先社員向けにどのようにデバイスを選定し、支給するかに影響する可能性がある。

 新しいiOSの機能の一部、特にマルチプレイヤー対応ゲームプラットフォーム「Game Center」は消費者向けなので、ビジネス向けのモバイル用途は考慮外だが、ほかの新機能――FaceTime、Retinaディスプレイ、HD動画撮影――はビジネスで使えそうだ。

 HD動画撮影とFaceTimeは、iPod touchの「現場用」デバイスとしての利用を増やすかもしれないし、Retinaディスプレイは仕事用アプリをより見やすくするはずだ。だが、潜在顧客が既に動画・写真を撮影できるデバイスを持っている可能性は高い。Wi-FiベースのFaceTimeとRetinaディスプレイは、Appleにとっては確かにセールスポイントだが、職場に大量に導入する理由としては不十分かもしれない。

 その上、新しいiPod touchの価格――8Gバイトで229ドル、32Gバイトで299ドル、64Gバイトで399ドル――が障害になる可能性がある。この数カ月、企業のIT支出は伸びてはいるものの、iPhone 4が16Gバイトで199ドル、32Gバイトで299ドルということを考えると、不況の中でこの種のデバイスの購入を正当化するのは困難かもしれない。

 しかしAppleの1日の発表により、iPadは企業向けデバイスとしてさらに有力な選択肢になるかもしれない。ジョブズ氏は、次期バージョンのiOS 4.2でiPadに新機能を加えると明らかにした。ワイヤレス印刷、マルチタスク、アプリフォルダ、統合型電子メールボックス、セキュリティ強化、デバイス管理機能、キーボードの調整、辞書機能が加わるという。

 同社はこれらの新機能で、他社からの競合製品を食い止めるつもりなのかもしれない。他社製品の中には、企業をターゲットにしたタブレットPCもあるだろう。7月12日のMicrosoftの年次Worldwide Partner Conferenceで、スティーブ・バルマーCEOはさまざまな顧客層に訴求するWindowsタブレットを開発していると語った。

 「キーボードがついたモデルや、キーボードなしのモデルが出てくる。たくさんのデバイスが登場するだろう」とバルマー氏は語っていた。「だがこれらはWindows 7を搭載し、Officeを走らせ、インク入力とタッチ入力を受け付ける」

 Hewlett-Packard(HP)は、最近買収したPalmのwebOSを搭載したタブレットを開発している。同社幹部は、Windows 7を搭載したビジネス向けのモデルも開発中と示唆している。SamsungDellなどのメーカーも、GoogleのAndroidを搭載した同様のハードをリリースしたり、開発している。つまり、これから数カ月の間に、生産性を高めるより強力なオプションを備えたiPadのライバルが登場するということだ。

 これらのライバルの動きを受け、そして絶えず製品ラインを改善したいというどのIT企業でも持っている意欲に駆られ、Appleは特にiOS 4.2を改良するだろう。今疑問なのは、既にビジネスの世界に踏み込んでいるiPadが、その勢力の大半を維持するためにどれだけ必死に戦わなければならないかだ。

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