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夏の電力対策、「ピーク時にテレビ消す」「シェスタ推奨、休日・勤務時間シフト」──化学工学会が提言(2/2 ページ)

» 2011年04月04日 15時16分 公開
[小林伸也,ITmedia]
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夜間勤務、長い昼休み、サーバ移転

 そこで重要になるのが電力需要の時間的・空間的シフトだ。以下の時間的シフトで670万キロワット、空間的シフトにより95万キロワット、合計765万キロワットのピーク需要を削減できると試算している。IT企業や企業のIT部門にとって重要な提言も含まれている。

▼時間的シフト

・休日シフト──平日と比べ週末は供給能力に余力がある。各業界の前面的な協力により、通常は土曜・日曜の休日を、夏季だけ月曜・火曜、水曜・木曜などとシフトすることで270万〜320万キロワット程度の削減効果がある

・勤務時間シフト──昼間だけ稼働している工場・研究所を夜間運転・夜勤に切り替えたり、大学では深夜研究・夜間授業などに切り替えることで、200万人相当がシフトすれば300万キロワットの削減効果。深夜勤務手当や減税、交通機関の深夜運行などが求められる

・シェスタや在宅勤務の推奨──昼夜逆転が難しい職種などは、昼休みをピーク時の2〜3時間にしたりするなどして100万キロワット程度の削減が可能。在宅勤務により勤務時間の裁量を広げることも有効

▼空間的シフト

・サーバなどを西日本や北海道へ移設──どこにあってもOKなサーバなどを電力に余裕のある地域に移設することで30万キロワット程度の削減を期待

・単身赴任ではなく、家族で移住──電力に余裕がある地域に生産を移すメーカーの動きがあるが、その際従業員は単身赴任ではなく、家族で引っ越すことを奨励することで、50万人が引っ越せば最大50万キロワット、100万人なら最大100万キロワットが削減できる

・国内外の留学、インターン促進──大学・大学院生などが電力に余裕がある地域の大学で学んだ単位を認めたり、海外留学、国内外の企業でインターンを奨励するなどして10万人が移動すれば最大10万キロワットの削減が見込める

・他地域への観光誘導──夏季の長期休暇取得を奨励、各地の地域振興と連携して観光を誘導し、定常的に5万人の旅行者があれば最大5万キロワットが削減できる

photo 各対策による効果の概算値

電力需要データのリアルタイム開示も要請

 提言では、これらは議論の余地はあるものの、大規模な計画停電を極力回避するには、電力需要の時間的・空間的シフトが不可避だとした。「提案した方策は、明日から容易にできることと少し時間がかかるもの、大きな努力や仕組みづくりが必要なものを含んでいるが、過度のガマンや経済の停滞を伴わずに夏のピーク電力に対応するための指針となるものと信じる」としている。

 また電力需要データのほぼリアルタイムな開示に加え、いつまでシフトを続ければ良いのか、電力供給の中長期的な見通しを提示して企業や国民に指針を提供することが重要だとしている。

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