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Webブラウザの比較調査にGoogleが影響力行使? セキュリティ企業が批判の報告書

» 2011年12月19日 07時50分 公開
[鈴木聖子,ITmedia]

 Webブラウザのセキュリティ対策を比較して最も安全なのは米GoogleのChromeだと結論付けた調査結果をめぐり、別のセキュリティ企業が異論を唱えている。論議は比較検証の方法や、資金を提供したベンダーの影響力にまで及んでいる。

 セキュリティコンサルティング企業の米Accuvantは、12月9日にGoogle Chrome、MicrosoftのInternet Explorer(IE)、MozillaのFirefoxの3大Webブラウザのセキュリティ対策を比較した調査結果を発表し、最も安全なのはChromeだったと結論付けた。2位はIEで、Firefoxは最も評価が低かった。この調査にはGoogleが資金を提供しているが、結果はAccuvant独自のデータに基づいた客観的なものだとしている。

 これに対して米NSS Labsは14日、Accuvantの調査方法を批判する内容の報告書を発表した。NSS Labsも先にWebブラウザの比較調査を実施しており、マルウェア対策機能の評価およびソーシャルエンジニアリング型マルウェアに対する防御率はIE 9が最も高いと認定していた。

 セキュリティ企業の英Sophosは16日のブログでこの論争を取り上げ、NSS Labsの14日の報告書の内容を紹介した。報告書でNSS LabsはAccuvantのWebブラウザ比較調査について、Google以外のWebブラウザにとって有利な項目が除外されるなど多数の不備があり、マルウェアのサンプルの取り方もGoogleが有利になる形でゆがめられていたなどと主張しているという。

 さらに、Accuvantの調査が発表されたタイミングにも疑問を投げ掛け、Firefoxの評価が低かったのは、GoogleからFirefoxへの資金提供契約が絡んでいるのではないかとの見方を示した。一部報道ではGoogleがこの契約を打ち切るかもしれないとの観測が伝えられており、Googleが自社に有利になるように「不当な影響力」を行使した可能性があるとNSSは論じているという。

 報道によれば、NSS Labsの幹部は同社もかつてMicrosoftの資金提供を受けて調査を実施していたことを指摘され、現在はそうしたことは行っていないと反論したとされる。NSS Labsは今年のWebブラウザ調査を発表した時点で、ベンダーからの資金提供は受けていないと強調していた。

 Sophosではこの論争について、特定企業がスポンサーとなったAccuvantのような調査を全面的に否定する理由はなく、一方でNSSの顧客企業がAccuvantの調査について、「不安を抱くのも、もっともなことだ」と解説。教訓として、「ベンダーがスポンサーとなった調査結果はうのみにしないことだ」と指摘している。

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