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PCI Express機器をイーサネットでつなぐ「ExpEther」、NECが商用化

» 2012年05月24日 18時21分 公開
[國谷武史,ITmedia]

 NECは5月24日、イーサネットを利用して離れた場所にある機器同士をPCI Express規格で接続できる「ExpEther(エクスプレスイーサ)」技術の商用化を発表した。同技術を採用するクライアント環境向けの3製品を発売した。

 ExpEtherは2006年から開発してきたもの。通常はPC内部だけで使われるPCI Express機器をPCの外部に拡張できる。「ExpEtherエンジン」(LSIやカード形態)をコンピュータ内に用意し、外部には同じくエンジンを搭載した端末をイーサネットで結ぶ。物理的にはイーサネットだが、論理的にはイーサネット内をPCI Expressのレイヤ3で接続。コンピュータ側からは、外部にあるGPUカードやディスク、メモリ、センサーなどのPCI Express対応機器がコンピュータ内部に設置されているように認識される。

計算能力を高めるのにコンピュータを丸ごと増設する手間がなくなる(左)。ExpEtherではイーサネットケーブルをつないで外部にあるPCI Expressをそのまま利用できる

 従来はコンピュータの計算資源を増やす場合に別のコンピュータを接続する必要があったが、この技術を用いることで必要な機能を持った機器を接続するだけでよく、計算資源の増設に伴うスペースやコストを削減しながら、PCI Express機器の使い勝手を高められるという。

 第一弾製品は、ホストコンピュータに搭載する「ExpEtherボード」(税別2万5000円)、ExpEtherボードと外部機器をつなぐための「ExpEther I/O拡張ユニット」(同4万円)、ディスプレイやキーボード、マウスなども接続可能な「ExpEtherクライアント」(同3万5000円)。6月22日から出荷される。

 同社ではメーカー他社との共同開発や受託開発、OEM、またExpEtherエンジンやIPの提供も予定するほか、データセンターなどの大規模環境に対応した製品の開発や無線への対応も進める計画。2014年度までの3年間で150億円の売り上げを見込む。

 会見した執行役員の丸山隆男氏は、「スケールアウトによる並列分散処理でビッグデータ解析などができるのに対し、ExpEtherではスケールアップというアプローチでリアルタイム性の高いデータ処理を実現できる」と語った。

第一弾製品となるボードやクライアント機器(左)。開発中の大規模マシン向け技術のデモ。ワークステーションにGPGPUマシンをつないで高速描画処理を実現している

 また大阪大学が10月にExpEther機器を先行導入することも発表された。大阪大学では教室に設置しているワークステーション(吹田、豊中、箕面の3キャンパスで全600台)をサーバルームに集約し、ExpEther経由で遠隔操作できるようにするという。これによってワークステーションの教室での設置スペースを10分の1に減らす。教室内の騒音が軽減されるほか、ワークステーションを集約することで管理性も高まるといった効果を見込んでいる。

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