現在、初音ミクの英語版を開発中だ。今の海外ファンはほとんどが聴き手だが、英語版を発売すれば、海外でも作り手が育っていくと期待する。日本のPが、自分の作った曲を英語に翻訳した英語版を作り、改めて海外に展開するといったこともできるようになる。「海外のクリエイターを育てることと、日本のクリエイターが海外展開しやすくする土台作りを、ちょっとずつやっている」(伊藤社長)
日本語のVOCALOID3版初音ミクパッケージも、近く発売予定だ。「たくさんのデータベースや機能が1パッケージになり、すごくお求めやすい価格になっている」(佐々木さん)という。
ミク英語版や新パッケージで作り手のすそ野を広げ、これまで曲を聴くだけ、動画を見るだけだった若い女の子などが気軽に曲を作って公開するような状況につなげたいという。「初音ミクを買って曲を作る行為が、気楽であってほしい」(佐々木さん)
ミクをリリースしてから5年。「できることは思いつく限りやってきた。ある意味、やり尽くしたところがあるかもしれない」と伊藤社長は話す。「ホップ、ステップ、ジャンプのホップは終わった。次の段階があるとしたら次のステージ、ステップだと思う。その段階に上がるともう少しできることが増えて、そこでいろんな創作が起こる可能性がある」(伊藤社長)
1995年の創業以来ずっと、「クリエイターのためのクリエイター」であり続けた同社。ミク以前は、音楽や音響、映像のクリエイター向けに、効果音や音源ソフトなどを販売してきた。ミクがきっかけで、イラストや動画など、音以外のクリエイターと出会った。「当社と接点を持つクリエイターの範囲が広がり、やらなきゃいけないこと、できることが増えていった。(同人文化など)趣味の世界にはいまだにうといが、それを理解しながら答えを出していくのが、ライフワーク化している」
クリエイターはプロに限らないし、音楽やイラスト、動画の創作者だけでもない。「才能のある一握りの天才だけじゃなくて、一般の人全員がクリエイター。自己表現や問題解決はすべて、クリエイトの仕事だと思う。そう定義すると、僕らがやれることはたくさんある」(伊藤社長)
初音ミクの周囲には、自発的な学びが起きているという。ミクで曲を作ったり演奏するために作曲や作詞、演奏を学んだり、「踊ってみた」をやりたいと、みんなで集まってダンスを練習したり。「日本全体に停滞感があるが、自発的に工夫して作るとか、人に喜んでもらおうと努力した結果モノが売れるとか、ネットで起きていることには光が見えてきたと思う。ミクを通じて自発的な行動を促すことで、世の中を良くするような行いに共感が集まり、社会の問題解決ができるようになれば」(伊藤社長)
(→「使えば増える」初音ミクと、「お金が王様」の時代の終わりに続く)
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