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» 2018年04月12日 09時10分 公開

「海賊版サイトのブロッキングは憲法違反」「漫画村は国内から配信されている」 楠正憲さんに聞く(3/3 ページ)

[岡田有花,ITmedia]
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海賊版サイトのブロッキング、立法化すべきか?

――閣議決定によるブロッキングは避けるべきだが、ブロッキングを可能にする法律を新たに定めるべきだ、との声もある。

 立法の前に、現行法の範囲で、できることはたくさんある。仮にブロッキングを立法化するにしても、立法事実、つまり、既存の法令では対応できないことがはっきりさせなくてはならない。

 出版社が海賊版サイトの運営者を開示するようCDNやそれを収容する通信事業者に開示請求を行ったが無視された、海賊版サイトやCDNを裁判で訴えて、裁判所から仮処分や差止命令が出たにも関わらず、海賊版サイトから無視された――といった実例を積み重ねれば、立法事実として制度改正・法改正に結びつけやすい。

 「海賊版サイトの影響で、出版社の売り上げが落ちている」という経済的な不利益だけでは、立法事実として不十分だ。また、そう主張するなら、海賊版サイトによる実際の被害額を明らかにし、その影響を客観的に証明すべきだ。「4000億円の被害があった」と主張しているようだが、紙と電子を合わせたコミック全体の市場規模が4000億円台で推移してきたのに対して大きすぎる数字で、そのまま信じることはできない。実際に売り上げが落ちているなら、海賊版サイトの影響と他の影響を分けた上で、具体的な額を公表すべきだ。

画像 コミック市場全体の販売額推移=出版科学研究所提供

――あえてブロッキングを立法化するとしたら、どんな法律になるのか。

 弊害が小さいのは「司法的ブロッキング」だろう。ブロッキングの対象を行政が恣意的に決めるのではなく、裁判所の差止命令を無視しているサイトに限定するなど、司法の手続きを経る形だ。現状ではサーバが海外にあり開示請求に応じない場合など、運営者の身元を特定できず裁判に訴えられないケースもあるため、運営者の身元を特定しなくても裁判に訴えることができるようにプロバイダー責任制限法の改正も必要だ。

 ブロッキングはそもそも、日本の憲法に違反する可能性が高いため、既存の法律との整合性を重視する行政からの立法は難しいのではないか。民意の支持が得られるようであれば、議員立法なら可能かもしれない。

――ブロッキングに効果はあるのか。

 効果はあまりないだろう。ブロッキングは簡単に迂回できる。ドメインをどんどん変えてしまえばブロッキングの効果が帳消しになってしまうし、DNSブロッキングを迂回して自由にサイトを閲覧できるサービスをGoogleやCloudflareが提供するなど、迂回のためのサービスも充実してきているため効果は極めて限定的だろう。ISPによるブロッキングよりも、テイクダウンを確実に行うための制度整備の方が効果的だ。

政府によるブロッキング要請、急に決まった?

――政府による海賊版サイトブロッキングは、急に決まった印象がある。

 この1〜2カ月で大きな動きがあったとみられる。ブロッキングについては、日本の権利者が共同で海賊版対策を行う「コンテンツ海外流通促進機構」(CODA)が2年以上前から提案しており、政府の知的財産戦略本部でも議論されていた。今年2月16日の知財本部の会合で、ブロッキングについて集中的に議論されているが、議事録が非公開で不透明だ。知財本部の会合はその後も2回行われており、直近の4月2日の段階では「ブロッキングを行おう」という結論には至っていなかったようにも見える。

 だがその直後の4月6日、政府による海賊版サイトブロッキングの報道が出た。結論ありきだったのかは分からないが、どこかのタイミングで関係者に対して水面下で強い働きかけと根回しがあったのではないか。7日の立憲民主党・枝野幸男代表のオープンミーティングを見ると、枝野代表もブロッキング容認しており、野党の根回しも進んでいるようだ。また、通信事業者への働きかけも進んでいると聞く。

――ブロッキングの要請がISPにあったとして、応じそうか?

 義務ではなく、法律違反となるリスクを排除できない以上、ISPをはじめとした通信事業者は難しい判断を迫られる。大手ISPの中には体制と設備が整っているところもあるが、中小は運用の煩雑さやコスト面で迷うこともあるだろう。

 これは私見だが、携帯電話キャリアには海賊版サイトを遮断する経済的なインセンティブがあるかもしれない。固定系ISPと異なり、もともと限られた無線データ通信帯域を有効活用するため通信を制御するシステムを整備しており、特定サイトの遮断にも容易に対応できる上、自社の有料電子書籍サービスに顧客を誘導するメリットがあるからだ。とはいえ要請に軽々と応じては、今後に禍根を残すことになるのではないか。

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