マウスに自然環境音を聴かせながら飼育したところ、平均寿命が最大17%延長した――こんな研究結果を、国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター神経研究所と公益財団法人国立科学振興財団情報環境研究所の共同研究グループが発表した。
研究グループは、生後8週齢のマウスを、(1)高周波を豊富に含む熱帯雨林の環境音を提示する広帯域音響条件、(2)同じ音源から20キロヘルツ以上の高周波成分(マウスがコミュニケーションに主に用いる帯域成分)を除去した音を提示する狭帯域音響条件、(3)通常の実験動物飼育環境の暗騒音下で飼育する対照条件――の3つの環境で飼育した。
その結果、(2)の狭帯域音響条件で飼育したマウスは、対照条件で飼育したマウスに比べ平均寿命が有意に延長(約17%)することが分かった。(1)の広帯域音響条件のマウスは有意差こそなかったが、対照条件に比べ平均寿命は約7%延長したという。
また、生存曲線を比較するとどの条件でも最長寿命はほぼ同じであるのに対し、マウスが死に始めるのは対照条件が最も早く、環境音を提示した2つの条件では最短寿命が延長することが分かった。
個体の寿命を詳しく解析したところ、特にオスでは、2条件とも対照条件に比べて最短寿命が有意に延長し、寿命のばらつきも小さくなることが分かった。
寿命が延長した原因について、2条件下ではマウスの自発活動量も有意に増加していたことから自発活動量についても調べたが、寿命との間に有意な相関は認められなかったという。よって、寿命活動の主要な要因は、自発活動量の増加以外にあると研究グループは結論付けている。
研究グループは、「マウスの実験結果を短絡的に人間に当てはめることには慎重である必要がある」と前置きした上で、「マウスの平均寿命が有意に延びた狭帯域音響条件には、マウスが聴覚で感じて鳴き声として使用する主な帯域が含まれていない。人間を含む動物に音環境が与える影響を考える時には、意識で捉えることのできない成分にも注意を払う必要があるだろう」としている。
研究結果は、英Natureの姉妹誌である「Scientific Reports」のオンライン版に5月21日に掲載された。
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