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「どう考えても速いよね」 MUFGとAkamaiの“世界最速”ブロックチェーン誕生秘話(4/5 ページ)

» 2018年06月29日 06時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

ブロックチェーンの本質

 さらに、「日本のフィンテックベンチャーさんってブロックチェーンの上にアプリケーションを載せることを考えているだけで、本質を突き詰めているところってほとんどない」と新村CTOは指摘。

 「ビットコインはコンピュータ科学的に見るとものすごい発明。研究テーマが山のようにある」と、ビットコインを熱く語る。

 「もともと分散コンピューティングの世界では、合意をどう取るかというのは常に問題になっていた。PoWという緩い結合で、ブロック生成を進めていくと結果として合意が取れていたというビットコインの発明も天才的」(同氏)

 「多数決論理は1960年代のアポロ宇宙船で培った技術。それをステップバイステップで進めていくことしか、専門家たちは考えていなかった。タンデムもストラタス(※)もそう。それを、ステップバイステップで合意を取らず、ブロック生成の結果として合意が取れている。そこに複雑で高度なハードウェアは一切いらない」(同氏)

(※タンデム、ストラタス……金融機関のトランザクション処理などに向く無停止コンピュータを製造する企業。タンデムコンピューターズは米ヒューレット・パッカードに吸収された)

 そんなビットコインのブロックチェーン技術だが、「そこではないところに焦点が当たってしまった」と鳴川CTOは続ける。

 「ビットコインはサイバーパンクだったりサイバーアナキストという人たちが、国や中央金融機関の束縛から逃れるために作るという方向に行ってしまった。それで、メカニズムそのものを掘り下げようという人があまりいなかったのではないか」(同氏)

 「ビットコインのブロックチェーンは数学的には素晴らしいもの。非中央集権ということは忘れて、メカニズムとしてどれだけパフォーマンスを追求できるかと試してみると、ブロックチェーンは結構すごいということ」――鳴川CTOはそう分析する。

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