MUFGとAkamaiは、そんな超高速の新型ブロックチェーンをペイメントでどう活用するのか。大きく分けて、「クレジットカードの少額決済」と、IoTの「使った分だけ課金」に商機があると見込んでいる。
クレジットカードは、基本的に決済のたびに与信確認(オーソリ)をするため、決済ごとにオーソリの手数料がカード会社に掛かる。つまり、少額での決済が続くとカード会社の負担となる。
そこで、カードの与信枠の一部をブロックチェーンに切り出すことでオーソリ頻度を減らし、決済も高速に行おうというのがMUFGのアイデアだ。
例えば、100万円の与信枠があるクレジットカードの10万円をブロックチェーンに切り出すとする。オーソリは切り出し時の1回でよく、ブロックチェーン側は、内部的に10万円分のトークンを生成する。
5円や10円といった少額決済をトークンで行うことでカード会社にはオーソリのコストが掛からず、10万円分を使い果たしたらまた一度オーソリを掛けて10万円分を切り出せばいい。
「クレジットカードは決済の手続きが非常に複雑であるため、ブロックチェーン上に組み込むのが難しい」と新村CTOはいう。それでも対応できるのは、ブロックチェーンのパフォーマンスを探求し、クレジットカードの現状を理解しているMUFGならではといえるのかもしれない。
また、「これからのIoTの課金はいわゆる月額課金のサブスクリプション型ではどこかで破綻すると思っている」と鳴川CTOは問題意識を持つ。
鳴川CTOは、スマート家電などIoT機器の利用は課金式になるだろうという立場に立つ。その上で、IoT機器が月額課金方式となるとどんどん増えていくIoT機器と1つ1つ契約を結ぶことになり、使うか使わないか分からないものに毎月多くのお金を払うことになってしまうと指摘。
「じゃあこれはいらないといって契約を消していくと、そのIoT機器は使えなくなってしまう。せっかくシェアリングエコノミーのようなことがIoTを通じてできる可能性があるのに、スポイルしてしまう」(鳴川CTO)
そうならない世界にするには、IoT機器の課金はサブスクリプション型ではなく、キャッシュオンデリバリー型、つまり「使った分だけ課金する」方式になっていくべきだというのが鳴川CTOの意見だ。
すると、一度当たりの利用料金に、5円や10円といったような少額の決済が多数発生することが見込まれる。
従来のシステムではこのような少額決済は決済コストが高すぎるため、やりたがる企業がいなかったが、新型ブロックチェーンをここに導入することでより安い決済が可能になり、IoTの参入障壁も下がるのではないか――鳴川CTOはそう分析する。
新村CTOも、「いろんな業界と水面下で話していると、数十円のものを売りたいという人は結構いる。ただ、それをやると今は赤字になるのでやっていないだけ」と潜在的な需要を見込む。
MUFGとAkamaiの「世界最速ブロックチェーン」は、19年度中に商用化する予定。決済に特化したインフラであるため、さまざまな立場の業者と提携を進めていきたい考え。
「IoTサービスの加盟店さんの立場で物事を考えることもあれば、そこにサービスを提供しているペイメント事業者さんがコストを下げたいというニーズもあるだろう。メーカーさんであればこういうIoTサービスを作りたいという需要もある。本当にどう活用していただいても構わない。安く皆さんに使ってもらえるビジネスにしたい」(鳴川CTO)
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