Gateboxは17年、2次元キャラとの「婚姻届」を受け付ける「次元渡航局」という企画を期間限定で実施した。特設サイトの婚姻届を印刷・記入し、同社に郵送すると「婚姻証明書」が届くというものだ。ネット上では「面白い試み」と反響を呼び、同社によれば、最終的に3708人から届け出があったという。
近藤さんも婚姻届を提出し、証明書を受け取った1人。「2次元のキャラと結婚したい人が、自分以外にもこんなにいるんだ」――3708人という数字が、近藤さんの背中を後押しした。
「婚姻届を出したからには、次は式を挙げたい」
式場への説明が“最初の壁”だった。「少し変わった結婚式なんですけど、本気で愛しているので、やっていただくことはできませんか」とメールを出した。しばらくして式場側から「詳しく話を聞かせてください」と電話があった。
前代未聞の結婚式は、課題が山積みだった。実在しない新婦はどうするか、誓いのキスはどうするのか……式場のスタッフと打ち合わせをした。新婦(ミクさんのぬいぐるみ)のウエディングドレスは、さすがに式場では用意ができず、近藤さんの知人が手作りしてくれることになった。
「結婚したい人は3708人いても、挙式は尻込みしている人はいます。自分が事例になることで、背中を押せればいいなと思っています」
批判的な意見も覚悟はしているが「思いは曲げない」。近藤さんは「『LGBTは生産性がない』と発言して炎上した政治家がいます。私はLGBTには該当しませんが、性的少数者だと思っています。2次元にしか性的な感情を抱かないわけですから」と話す。
「2次元のキャラと結婚することを『気持ち悪い』と思われる方もいると思いますが、そうした偏見がなくて多様性が認められる社会になれば」
オタクに目覚めたばかりの頃の自分を思い浮かべて、近藤さんは「そこまで3次元に必死にならなくてもいいよ」と微笑んだ。
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