まずは、興行としてeスポーツイベントを成立させるノウハウだ。世界では数千人から数万人を動員するスタジアムやホテルなどを舞台に世界大会が繰り広げられているが、日本ではまだその経験が乏しい。数万人を集客するゲームイベントのほとんどは、新作タイトルの展示や体験を兼ねたものだ。
「例えば、大きなスタジアムで大会を開催し、5万枚のチケットを売れるかといわれると分からないし、まだその域に達していない。チケットを売ることにチャレンジできていない」(中村さん)
日本で人気のあるタイトルが、海外で競技人口の多いタイトルとは異なる点も見過ごせない問題だ。日本では「ストリートファイター」シリーズをはじめとする格闘ゲームのプロ選手が世界大会でも活躍しているが、世界で高額な賞金が出るのは「Dota 2」などのPCゲーム。5月には、米Epic Gamesがバトルロイヤルゲーム「フォートナイト」(Fortnite)のeスポーツ大会に、1億ドル(約110億円)の賞金を拠出すると発表したことも記憶に新しい。
また、日本eスポーツ連合が発行するプロライセンスも一部タイトルに限られており、それを批判する声もあった
eスポーツ先進国といわれる韓国や欧米諸国をまねればいいのかといえば、そう簡単な話でもない。中村さんは「欧米はプレイヤー主導で盛り上がったが、韓国や中国は政府や大企業による官僚主導で盛り上がった」とし、国によって事情や国民性も異なるため、簡単に他国の成功事例を模倣すればいいわけではないと強調する。
「韓国は2000年頃からプロプレイヤーをタレントに見立てて売り出そうとしていた。スポーツアスリートビジネスというべき大きな産業になり、それが軌道に乗ってしまったのがすごい」(中村さん)
アールさんは、2020年の東京五輪が日本のeスポーツをアピールする好機と捉える。
「2020年は世界各国の人が日本を訪れるので、eスポーツイベントもかなり大規模に行われるはずで、いろんな人が現時点でそれに向けて動いている。ゲームを普段やらない人にも、(eスポーツが)こういうものだと見せるタイミングが来る」(アールさん)
かずのこ選手は、「競技として真面目にやっている人たちがいるのを理解してもらい、スポーツ選手と同じように扱ってもらえるようになれば。自分の好きなものを胸を張って好きだと言えるのが理想」と、プロプレイヤーとしての思いを語った。
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