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「すごすぎる」「発想の勝利」 カエルの合唱の“法則性”、通信の効率化に応用 研究者に聞く(2/2 ページ)

» 2019年01月15日 14時09分 公開
[片渕陽平ITmedia]
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 これに対し、合原助教は「むしろ逆で、カエルの合唱を理解するために、無線センサーネットワークの考え方が役に立つのではないかと思ったのが、私にとってこの研究のスタート地点だった」と説明する。これまで合原助教は、カエルの合唱のパターン、特に近くの個体同士がタイミングをずらして鳴く現象を研究してきた。

 カエルが小さな体のわりに大きな鳴き声を出せるのはなぜか。有限のエネルギーをどのように活用すれば効率的にメスにアピールできるのか。同様の問題を抱えたシステムとして注目したのが無線センサーネットワークだった。

 ただ、合原助教は「このような発想ができたのには背景がある」と振り返る。それは、今回の研究論文のラストオーサー(最終著者)でもある大阪大学大学院の村田正幸助教(情報科学研究科)の研究室に2006〜08年ごろに所属していた牟田園明さんの研究だった。

 牟田園さんは、合原助教が以前発表した「カエルが交互に鳴く」という研究を知り、そのメカニズムを無線センサーネットワークのパケット衝突回避に応用できないか、と発案。牟田園さんが研究を進める過程で、2007年ごろ何度か議論したという。

 合原助教は「そのとき、牟田園さんから教えてもらったカエルと無線センサーネットワークが関連し得るという発想が、今回の研究に影響を与えている」と振り返る。今回の論文でも、牟田園さんと村田教授の学術論文を引用している。

 一方、牟田園さんらの研究は数値シミュレーションがベースで、実験データは扱っていなかった。そこで、合原助教がこれまで取り組んできたカエルの実験と組み合わせ、より実態に近い数理モデルを作ることで、カエルの省エネ戦略を明らかにし、通信の課題にも応用しようと考えた。こうして、無線センサーネットワークを制御する今回の手法の提案につながったという。

 合原助教は「カエルは全世界で6500種以上が報告されており、中にはとても優れた鳴き方をするものもいるかもしれない。世界中をまわって面白い鳴き方のカエルを探し、その秘訣を実験と数式で調べていきたい」と今後の展望を語った。

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