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海外の富裕層はなぜゴールド(金)を持つ? 金を買う3つの方法渋谷豊の投資の教室(3/3 ページ)

» 2019年02月18日 10時55分 公開
[斎藤健二ITmedia]
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ゴールドではなくシルバー(銀)ではダメ?

サイトウ: ゴールドじゃなくて銀じゃダメなんですか?

渋谷: よくその質問を受けます。ゴールドのほうがいいのは、昔の金本位制の名残で、中央銀行の価値の見せ方としてゴールドが根本にあるということ。そして工業製品としてかなり使われている点です。生活必需品の中にはゴールドが入っていて、スマホの中にも入っている。需要が高い金属なんです。

 投機的でないことが、資産価値を保つためには重要です。プラチナや銀は投機的になりやすい。世の中には、ゴールドと銀の価格差が狭まるとバブルが来ているといわれる場合があります。資金の行き先がゴールドでは事足りずに銀まで買われる状態ですね。そのように銀やプラチナは投機的に使われることがあります。

 実需が伴って、中央銀行が必要としている、そしてドルとの逆相関。そういう点からこれからもゴールドが重宝されていくだろうと思います。

ゴールドを買う、3つの方法

サイトウ: ちょっとゴールドを持ってみたいときに、どうやって買うのがいいんでしょう? 「何とか金属」で買うと手数料が高いと聞きました。

渋谷: ゴールドの買い方がいくつかありますが、誰でも頭に浮かぶのが積み立て純金コツコツ系ですね。これは実際にゴールドを手にできるんですが、手数料が高い。業者によって違いますが、全体的に言えます。

 現物でゴールドを持ちたいという欲望がない人は、ペーパーマネーを通じて買うのがいいといわれています。台頭してきたのがゴールドのETFです。米国ではゴールドのETFの時価総額が何兆円もあるんです。その何兆円に見合う金塊がニューヨーク連銀の地下に置いてあって、ETFを持っていくとゴールドに替えてくれるといわれるくらいです。ペーパーマネーだけどゴールドの在庫を持っています。

 世界の投資家はゴールドの現物ではなく、ETFを通じて株の売買と同じ手数料で購入しています。そのETFはゴールドの価格に連動するので、ゴールドを持っているのと同じ効果があるし、もし世の中クラッシュしても、実際のゴールドの在庫もあります。ルパンが盗みに入っていない限り。ETFといっても架空のものではないんですね。

(写真提供:ゲッティイメージズ)

 ゴールドの現物とゴールドのETFのほかに、もう一つ買い方があるんです。金鉱山の会社の株を買って、間接的にゴールドを買うという方法です。ゴールドの価値が上がった時、ゴールドの埋蔵量は限られているので、ゴールドの発掘権を持っている会社の価値が上がるというわけです。こうした会社の株を買うのも一つのアイデアではあるんですが、ゴールドの価格と連動にレバレッジがかかっていて、イメージでいうと2倍くらいの上下に動きます。ゴールドが5%上がると金鉱山の株は10%上がる感じですかね。

 余談ですが、ドバイに行くとゴールドの自動販売機があります。ブルジュ・ハリファのような観光地に行くと、ゴールドの自動販売機が置いてあって。ちゃんと値段も毎日変わります。面白いところでいうと、こういうところで買う方法もあります。

サイトウ: 少し買うのはいいとして、少しってどのくらい買えばいいんでしょう?

ゴールドの自動販売機(写真提供:ゲッティイメージズ)

渋谷: 教科書的には、資産の10%が上限だといわれています。1%だとあまり意味がありません。ゴールドは動きが少なくて経済が悪いときやインフレ傾向のときに効果を発揮するものなので、普通の時はほとんど価格が動かない。10%では多いと思う人もいると思いますが、ゴールドの価格がゼロに向かっていっても必ず価値は戻ってくるものなので、長く金庫に入れておくようなイメージです。

 でも気をつけてほしいのは、ゴールドを10%買うというのは、資産運用のエンジンを10%落とすということでもあることです。守りのため、保険のために10%を寝かせる。90%だけのエンジンで資産運用を頑張っていこうと宣言したようなもの。残りの90%を使いながらで、自分の目標に向けて増やしていくことになります。ただゴールドを組み込んだことで、90%のエンジンに過度なリスク、つまり高い期待利回りを背負わせるようであれば、ゴールドの割合を見直さなければいけません。

 ゴールド自体の価値や能力は疑いのないものです。ただその人によって金額目標や運用期間や毎月積み立てられる金額などの条件は異なるので、一概に10%持ちましょうともいえないし、持たなくてはいけないとも思いません。例えばインフレ債券をすごくいっぱい持っている人は、ゴールドをあまり持たなくてもいいかなとも思うわけです。

話し手 渋谷豊

ファイナンシャルアカデミー取締役。中上級者向け講座では教壇にも立つ。大学卒業後、邦銀勤務を経て、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科(MBA)を修了。その後、米系、仏系銀行のプライベートバンク部門にて、富裕層の資産運用業務に13年間従事。2008年の世界的金融危機を体験し中立的な金融アドバイスの必要性を痛感し、独立系投資顧問会社代表に就任した後、さらに幅広い層に金融経済教育を広めるためファイナンシャルアカデミーに参画。現在は投資信託スクールでの講師のほか、Jリーグの選手への講演等も行う。ファイナンシャルアカデミー

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