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なぜ永遠にPoCを続けるのか? 企業のAI導入が進まない根深い理由(2/2 ページ)

» 2019年03月05日 13時44分 公開
[村上万純ITmedia]
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 こうした人材やAI導入にかかる費用について、岡田社長は「コストではなく投資と考えるべき」と話す。「AIの成果は工数では測れないので、まずはやってみないと。優秀な人にしっかり投資するのがゴールへの近道。1人だけ採用してもだめで、チームで採用することでドライブしていく」(岡田社長)

 ここでも「稟議が通らない」という問題がネックになる。導入の段階ではどういった効果が得られるか明確ではないので、現場主導のボトムアップで進める場合、上司や社長を説得する必要がある。岡田社長は「やってみないと分からないことを理解した上で推し進める、力強い管理職の存在も必要」と強調する。

 AIプロジェクト全体で考えたときも、ある程度の予算は必要だ。岡田社長は「売上が5倍や10倍に伸びるチャンスがごろごろ転がっているが、最新GPUや優秀な人材を採用するだけでも数千万円ほどかかってしまう前提はある」と説明。自社業務の中で改善効果の高いコア事業を見つけ、投資に見合ったリターンを得ることが成功の近道のようだ。

 しかし、いざAIを導入しようとしても、PoCから先に進めない企業も多い。

問題その3:PoCで終わる問題→自分事としてやってみる

 多くの企業がPoC止まりになってしまう原因は何か。マスクド・アナライズ氏は「最初に、これくらいの精度やコストメリットが出ればやる、という判断基準を作らないといけない」と話す。仮にAIで99%の精度が出ても、次は99.5%を目指そうと永遠に精度を上げ続けて目的を見失ってしまうパターンもあるという。「その時点でどんなビジネスができそうかを考えることが重要」(岡田社長)

 小島氏は「日本企業のPoCは単なる技術検証になっているが、本来はビジネス的な検証をしないといけない」と指摘する。ABEJAはAIベンダーの立場で企業のAI導入を支援しているが、岡田社長によると「2018年はかなりのお客さんが(PoCから)本番に移った」実感があるという。

 この「PoCで終わる問題」を打開するためにマスクド・アナライズ氏が提唱するのが、「DGWAサイクル」だ。

AI マスクド・アナライズ氏が作成したDGWAサイクルの図

 日本企業でよく聞くPDCAサイクルがAI導入にはうまく当てはまらないことを受け、マスクド・アナライズ氏が考案した概念。PDCAは実務において、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Action(改善)のサイクルを回すことだ。

 一方のDGWAサイクルは、リアクション芸人出川哲朗氏にインスパイアされた、別名“出川サイクル”。 Do(実行)→Go for Broke(当たって砕けろ)→Warm Mind(周囲の温かい協力)→Reaction(反応)というサイクルで、「まずやってみる」ことから始まるのが特徴だ。

 岡田社長もこれに同意する。「AIの進化は恐ろしく早い。出川サイクルでやらないと取り残されてしまう。とりあえずやってみることを許容できる組織ではAIやディープラーニングの導入が進んでいく」とし、「中小企業はめちゃくちゃチャンス。AI導入で、これまで太刀打ちできなかった大企業を倒すことができる面白いフェーズにいる。自分たちでいけそうなところが見つかれば恐ろしくジャンプアップできる」と語った。

 登壇者らは、AI導入について「まずやってみる」ことを強く推す。マスクド・アナライズ氏は「ベンダーに相談する前に、まずは自分事として捉えてほしい。AIを学ぶ書籍や情報はたくさんあるし、自分で勉強してAIを触ってみて、自社の強みが何かを感じ取ってほしい」と話す。

 「目的などコアの部分を固めて実行した上でダメだったら、われわれのようなベンダーに相談に来てください。200%の力でお答えします」(マスクド・アナライズ氏)

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