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「金」を手にしたYouTubeマン 「知識の高速道路」を加速するもの新連載「動画の世紀」(4/4 ページ)

» 2019年03月12日 10時36分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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日本にも「エデュチューバー」の時代が来る?

 YouTubeはこうした教育コンテンツをさらに後押ししようとしており、それを配信するユーチューバーを「エデュチューバー(EduTuber)」と呼んで、さまざまな支援策を打ち出しています。

 昨年の2018年10月には、同社は「Learning」というプログラムを開始し、エデュチューバーの支援に2000万ドルを投資すると発表しています。また同じく2018年には、「エデュコン(EduCon)」というカンファレンスを開催。しかもカリフォルニア、メキシコ、ブラジルの3都市で行うという力の入れようで、エデュチューバー・コミュニティを盛り上げようと、お金以外の支援方法も模索しています。

 ちなみにこのエデュコンですが、2019年度も開催が予定されており、アジア圏への拡大も計画されています(第1弾として選ばれたのはインドでした)。日本ではVTuber(バーチャルユーチューバー)に注目が集まっていますが、エデュチューバーにも関心が寄せられるようになっていくかもしれません。

 実際に成功を収めるエデュチューバーも登場しています。YouTube上で英語を教えるルーシー・ベラ・アールさんは、2016年に自身のチャンネル”English with Lucy”を立ち上げた24歳の女性ですが、既にチャンネル登録者数は約180万人となっています。コンテンツの内容も言語も違いますので、簡単な比較はできませんが、NHKの公式YouTubeチャンネルの登録者数が約120万人ですから、ルーシーさんの人気のほどがわかるでしょう。

photo YouTube英語教師のルーシー・ベラ・アールさん

 最後にもうひとつ面白い話を。前述の「YouTubeの時代」には、スタンフォード大学とコーネル大学のコンピュータ科学者から成る研究チームが、YouTube上の教育系動画を解析するアルゴリズムを開発したという話が紹介されています。それを使って教育系動画をコンピュータに「学ばせた」ところ、そのコンピュータは複雑な作業のステップでも正しく把握できたそうです。人間がやり投げの動画を見てやり投げの金メダリストになれるなら、ロボットがYouTube上に蓄積された無数の料理動画を見て、私たちのために料理を覚えてくれる日もそう遠くないでしょう。

 人間が人間のために生み出した「知識の高速道路」が動画によって加速され、最後にそこをロボットやAIたちが通る。エデュチューバーたち一人ひとりが、そんな未来に貢献しているのかもしれません。

著者プロフィール:小林啓倫(こばやし あきひと)

経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)『YouTubeの時代』(ケヴィン・アロッカ著、NTT出版)など多数。


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