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大阪で“ヤミ民泊”4200件撃退! 悪質業者と闘い続ける「撲滅チーム」の正体(2/4 ページ)

» 2019年04月17日 05時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

大阪市が組織した「違法民泊撲滅チーム」とは

 ヤミ民泊の摘発を目指して奮闘する彼・彼女らは、大阪市が2018年6月に組織した「違法民泊撲滅チーム」のメンバー。19年4月現在では、警察OBや、自治体が任命した「環境衛生監視員」の資格を持つ薬剤師や獣医師、事務員など約70人が在籍中だ。

 普段は、市民からの通報を受け、「民泊禁止の物件に外国人が出入りしている」といった情報を基に、小人数の班に分かれて現地調査を実施している。このほか、ヤミ民泊だと確定した物件に警告文を投函したり、違法民泊の監視体制を強化するよう国に要望書を提出したりと、多岐にわたる活動を行っている。

 「Airbnb」といった大手民泊仲介サイトにヤミ民泊が掲載されているケースもいまだにあるといい、運営企業のAirbnb Japanなどに削除依頼を出すことも少なくない。

photo 違法民泊撲滅チーム 旅館業指導担当部長の安井良三氏(=左)。右は薬剤師の資格を持ち、同チームの指揮を担う保健副主幹の藤川徹氏

 活動拠点を置くのは、大阪市内の浪速区役所。現場調査のほか、悪質業者に違法な営業をやめるよう指導する権限も持つ。目指すのは、6月末に大阪市内で開催予定の「G20大阪サミット(金融・世界経済に関する首脳会合)」までにヤミ民泊をゼロにすることだ。

 目標達成に向け、結成から10カ月間で約2万1000回の現場調査を行い、約4700件のヤミ民泊を確認。うち約89%に相当する約4200件に対し、営業許可を取らせたり、廃業させたりといった対処を取ってきた。

 精鋭部隊をまとめる、違法民泊撲滅チーム 旅館業指導担当部長の安井良三氏は「短期間に多くのヤミ民泊を摘発したので、革新的な手法を使っていると思われるかもしれないが、実際は地味な現地調査の積み重ね。空振りに終わることも多いし、営業をやめさせた業者が場所を変えて復活し、いたちごっこになることもある」と苦渋の表情を浮かべながら話す。

 それでも、ヤミ民泊の中で凶悪犯罪や火災が起きたり、民泊禁止の物件で見知らぬ観光客が大騒ぎをして近隣住民を悩ませたりすることを防ぐため、違法民泊撲滅チームは日々地道に現場を回っているのだ。

photo 調査を行う「違法民泊撲滅チーム」のメンバー

違法民泊の動機は「届け出が面倒」「お金を稼ぎたい」

 あらためて整理すると、民泊とは、一般住宅に旅行者を有料で宿泊させるサービスを指す。かつては自治体が定める基準を満たした上で旅館業法の許可を得るか、国家戦略特別区域法に基づく「特区民泊」の認定を受ける必要があった。

 だが、東京オリンピック・パラリンピックに向けて訪日外国人の増加が見込まれることや、空き家の有効活用が期待できることを受け、規制緩和の一環で18年6月に住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)が施行。物件の規格などが基準を満たしている場合は、オーナーが自治体に届け出れば合法的に営業できるようになった。

 ただ、「届け出が面倒くさい」「広さや防火設備が民泊の基準に満たない物件に、こっそり人を泊めてお金を稼ぎたい」「物件のオーナーが外国人で、日本の法律を理解していない」といった理由から、自治体に届け出ないまま運営する違法民泊(ヤミ民泊)が横行しているのが現状だ。

photo 浪速区役所の貼り紙。ヤミ民泊を根絶するという強い意志が感じられる

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