先日、マイクロソフトが興味深い発表をしました。最近ホットなテーマである、デジタルサービスの「信頼性」を扱ったものです。
日本を含むアジア14カ国を対象に、マイクロソフトとIDC Asia/Pacificが共同調査しました。私たち消費者が、政府や企業のデジタルサービスを使うときに、セキュリティや個人情報などのリスクに対してどれほど関心を持っているのかを調べています。
調査によると、「多少価格が上がったとしても、信頼性の高いデジタルサービスを利用する」と答えた日本の消費者は3人に1人。これを多いとみるか少ないとみるかは判断が分かれると思いますが、非常に興味深いのでぜひ公式サイトで直接そのデータを参照してみてください。
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(編集:ITmedia村上)
では「このサービスは信頼できない」と感じたら、消費者はどのように行動するのでしょうか。調査では、日本の消費者の約40%が「信頼を損なう体験があったら、ほかの企業のサービスに切り替える」と回答。約25%は「サービスの使用を完全に停止する」と答えました。これはアジア太平洋地域と比べると少ない数字です。
一方で、それでも「サービスを継続する」と答えた日本の消費者は16%で、アジア太平洋地域の13%を上回りました。これを見る限り、「日本人は他のアジア太平洋地域に比べ、信頼できないサービスをそのまま使い続ける」傾向があるように思います。
マイクロソフトは、企業が消費者にデジタルサービスを使ってもらうには信頼の獲得が必要だと説いています。最近は「EU一般データ保護規則」(GDPR)の影響で、日本でも個人情報やプライバシー保護への意識が高まっています。
またアジア太平洋経済協力会議(APEC)は、国境を越えて移転する個人情報を適切に保護する仕組みである「越境プライバシールール」(CBPR)の普及に取り組んでいます。サービス提供者は、こうした世の中の動向を常にチェックしておく必要があるでしょう。
消費者は、企業やサービスの信頼性をどう判断すればよいのでしょうか。残念ながら、マイクロソフトの調査の中にはこの問いに対する明確な答えはありません。というより、絶対的な正解はどこにもないといえます。信頼は買うことができませんし、信頼できる企業は一朝一夕では作れません。企業は、サービスの利用者に対して誠実に向き合う必要があります。
ここ最近はそういった“信頼”を大きくアピールする企業が増えました。例えば「Find My」や「Sign in with Apple」といったサービスを提供するAppleもその1つです。
Appleはプライバシー保護を声高にアピールし、他の巨大企業と“信頼”で差別化を図ろうとしています。個人的にその考えは非常に評価していますが、問題は私たちがApple自身を信じられるかどうかでしょう。
過去に大きな情報漏えいをしたことがある企業の中には、自社サイトのトップページに大きく「堅固なセキュリティ」と掲げているところもありました。しかし、実際にはずさんなデータ管理をしていたことが判明しています。“自称安全”をアピールするだけでは、企業は信頼されないのです。
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