コラム
» 2019年06月19日 07時00分 公開

「安心」を土台にデジタル技術の未来を再構築:WWDCで鮮明になった「Apple=安心ブランド」という戦略 (1/5)

tvOS、watchOS、iOS、macOSに加え、第5のOSとしてiPadOSも発表されたAppleの開発者イベント「WWDC 2019」。5つのOSに共通する開発姿勢を見ると、今、世界で起きている新しいデジタルの潮流とピタリと符合をしていることが鮮明になってきた。Appleの今だけでなく、世界のテクノロジー業界全体が迎えている変化についても見ていこう。

[林信行,ITmedia]

 AppleがWWDC 2019で行った膨大な量の発表。その中でも、昨今の同社の姿勢が際立ったのが「Sign in with Apple」だ。確かに渋い機能ではあるが、シンプルな外観の裏側にかなり多彩な役割や、戦略を込めたデザインが同社らしくて面白い。今後、迷惑メール増加の抑止力となることも期待できる。

 本稿ではこの機能に代表されるWWDCで発表されたアップルの「安心」機能を紹介しつつ、今、シリコンバレーの外で勢いを増す、テクノロジーを安心できる社会づくりに役立てる「Technology for Good」の潮流についても紹介する。

Sign in with Apple WWDC 2019で発表された「Sign in with Apple」

「Sign in with Apple」という抑止力

 Sign in with Appleは日本語に訳すと「Appleを使ってログイン」だ。よく見る「Facebookでログイン」、「Googleでログイン」といったソーシャルログインの代わりになる機能である。これを使えば、Face IDの顔認証で面倒な操作なく一瞬にログインし、すぐにアプリやサービスが使えるようになる。それに加えて提供者があなたを特定したり、奪った情報で迷惑メールを増やしたりできなくなるのも魅力だ。

Sign in with Apple Webサービスでよく見かけるソーシャルログイン

 隅々まで練られた機能だが、中でも印象的なのは「ユーザー登録用電子メールアドレス」のアイデアだろう。登録したサービスで、何かがあった時の本人確認や連絡用のメールアドレスの登録は一般的に行われている。Appleは決してそのニーズを否定してはいない。

 ただ、中にはそうして獲得した電子メールアドレスを業者に横流しする悪徳サービスもある。そこでAppleは登録時に、そのサービス専用の電子メールアドレスを発行する機能を用意した。

 例えばiPhoneで、何かのサービスに登録する時にメールアドレスの入力欄が表示されると、iPhoneの画面に「Hide My E-mail(電子メールアドレスを教えない)」というオプションが表示される。これを選ぶと、iPhoneが自動的に、そのサービス専用のランダムで用意した「@privaterelay.appleid.com」で終わる電子メールアドレスを作って登録画面に自動入力してくれる。長くて複雑なアドレスだが、覚えられなくても心配は不要だ。

 このアドレスに届いたメールは、あなたが普段使っている電子メールアドレスにちゃんと転送されるので、登録したサービスからの大事な連絡はちゃんと読むことができる。

Sign in with Apple 「Hide My E-mail」を選ぶとランダムでメールアドレスが生成される

 これの何が凄いのか?

 例えばそのサービス提供者が、あなたのメールアドレスを迷惑メール業者に横長ししたとしよう。すると、確かにあなた宛の迷惑メールが一時的には増える。ただ、迷惑メールアドレスの送り先は、あなたの本物のメールアドレスではなく、先ほどの複雑で覚えられないメールアドレスだ。サービス提供者専用に作成したアドレスでもある。

 あなたが「このアドレスは迷惑メールだらけなので、もう使わない」と設定を削除すれば、以後、そのルートでの迷惑メールは一切届かなくなる。

 これは裏を返せば、どのサービス提供者がメールアドレスを漏らしているかを特定する機能でもある。あなたが利用するサービスやアプリごとに、連絡先のアドレスを切り替えて登録しておけば、どのアドレスに迷惑メールが届いているかを見ることで、どのサービス提供者が、あなたのアドレスを横流ししたかが分かってしまうことにもなり、結果として迷惑メール行為そのものに対しての抑止力になる可能性も秘めている。

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