京都大学・東京大学・茨城大学などの研究グループは7月2日、絶縁体中で金属のように熱を運ぶ役割を持つ未知の中性粒子を発見したと発表した。「これまでに知られていない、全く未知の粒子」(論文責任著者で京都大学の松田裕司教授)という。
固体中で熱を運ぶ役割を持つのは、動き回れる電子(伝導電子)と、固体を構成する原子の振動(格子振動)の2種類だ。金属は動き回れる電子が多いため熱伝導率は高く、絶縁体は動き回れる電子が少ないため熱伝導率は低い。
研究グループはイッテルビウム12ホウ化物(YbB12)という絶縁体物質に注目。YbB12を0.1ケルビンという絶対零度近傍まで冷やし、格子振動による熱伝導を無視できる状態で測定したところ、電気を通さないにもかかわらず金属のような温度変化を示したという。
「これは伝導電子以外に熱を運ぶ中性粒子が存在しないと説明できない現象だ」と松田教授は実験結果を解説する。
同研究グループは18年にも、金属を特徴付ける現象の1つをYbB12で観測したとする研究結果を米科学雑誌Scienceに発表していた。この研究結果に対し、他の研究者から「何らかの未知の粒子があるのではないか」という意見が出ていたことが今回の研究背景にあるという。
「しかし、今回の研究から示唆される中性粒子が昨年受けた意見を補強するものなのかはまだ分からない。今後の研究で明らかにしていきたい」(松田教授)
研究結果は、英科学雑誌Nature Physicsに7月1日付で掲載された。
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