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琉球銀行、電話システムをクラウドに移行 定年後に復帰した62歳が担当 「まだできる」の声に奮起(1/3 ページ)

» 2019年07月22日 05時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 「銀行」と聞くと「お堅い」「伝統を重んじる」などのイメージを持つ人は多いだろう。こうした印象をいい意味で覆すべく、テクノロジー活用を推進しているのが、地方銀行の琉球銀行(琉銀)だ。琉銀は、オンプレミス環境に構築していた電話対応のシステムを、7月からクラウド型の「Amazon Connect」に全面移行。店舗にかかってくる電話を全て同システムに転送し、自動応答で用件を聞いた上で、経験豊富なオペレーターが対応する仕組みを取り入れた。構築したのは、同行を定年退職後に再雇用された62歳の人物だという。

Amazon Connectは「いいおもちゃ」

 「IVR(自動音声応答装置)やCCP(コンタクト・コントロール・パネル)など、専門用語が難しすぎて、復帰したばかりの頃はどうなることかと思いました。でも、実際にAmazon Connectを触ってみると楽しかった。『いいおもちゃを手に入れた』と思いましたね」

 こう振り返るのは、コールセンターの移行を手掛けた、喜納(きな)兼次郎さん(営業統括部 ITチャネル戦略室)だ。喜納さんは1983年に新卒で入行した後、外国為替を扱う部署などに20年以上勤務。本業と並行し、琉銀のコーポレートサイトを制作した経験や、為替取引関係のシステム構築を手伝った経験もある。

photo コールセンターの移行を手掛けた、琉球銀行の喜納兼次郎さん(=右)と、復帰をすすめた伊禮真さん(=左)

 その後は、50代後半に入って総務部門に異動し、株主総会の運営サポートなどを行ったのち、2017年10月に定年退職した。だが、銀行業務に精通し、ITの知識もある喜納さんが琉銀を去ることを惜しんだ後輩が、「まだまだできる」と強く引き止めた。熱意にほだされた喜納さんは、ほとんど休みを取らず、11月に嘱託職員として復帰した。

 喜納さんに復帰をすすめた、琉銀の伊禮(いれい)真さん(営業統括部 メディア戦略室 室長)は、「インターネットの黎明期である20数年前にWebサイトを作った経験があり、プログラムが書ける。長年の経験で培った銀行業務の知識も豊富。そんな喜納さんが琉銀を去るのはもったいないと思いました。ちょうど当時、行内では電話対応の煩雑さが問題視されており、改善が急務になっていたので、喜納さんの力を借りることにしました」と説明する。

以前の琉銀の状況は?

 琉銀は全国に計75カ所の店舗(本店、支店、出張所)があり、行員が「口座を作りたい」「通帳を再発行したい」「積立預金を始めたい」といった顧客の相談に乗っている。それに加え、同様の相談・問い合わせの電話もひっきりなしにかかってくる。琉銀はこれまで電話対応専門のスタッフを置いていなかったため、行員がその都度接客を中断して電話に出ていた。

 この状況を改善し、行員が接客に集中できる環境を作るため、伊禮さんは以前からAmazon Connectに着目し、導入したいと考えていた。だが、行内のIT部門は、オンプレミス環境のシステムを運用したり、システム構築を外部のパートナー企業に依頼したりといった業務が中心。新しいシステムを取り入れる場合に、何度も稟議を重ねる文化も残っていた。

 そのため伊禮さんは、クラウドツールの強みを生かした「スピーディーに構築し、現場で使いながら改善する」といった仕事は、琉銀のIT部門には向かないと判断。年齢こそ60代だが、総務部門時代にビジネスSNS「Workplace by Facebook」を一部に導入した経験もあり、最新のツールに抵抗がない喜納さんに白羽の矢を立てたのだ。

photo 琉球銀行の公式サイト。かつては行員が接客中でも電話に出ていた

「Qiita」「GitHub」などで独学

 喜納さんは戸惑いもあったというが、復帰すると早速、Amazon Connectに関する知識の収集を始めた。「『Qiita』や『GitHub』、IT関係のブログなどをたくさん読み、分からない単語を独学で理解しながら知識をつけました。それと並行し、スマートフォンやタブレットを全行員に配る作業も始めました」(喜納さん)

 その後、Amazon ConnectのIDを作成してログインし、一通りの使い方や仕組みをつかんだ後は、定型コードを組み合わせたり、「node.js」でコードを書いたりし、琉銀に最適な電話システムを作り始めた。

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