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琉球銀行、電話システムをクラウドに移行 定年後に復帰した62歳が担当 「まだできる」の声に奮起(2/3 ページ)

» 2019年07月22日 05時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

AWSベースのAmazon Connectとは

 Amazon Connectは、Amazon Web Services(AWS)がベース。電話を録音してクラウド上に保存できる他、AWSの文章読み上げサービス「Amazon Polly」と連携し、「○○をご要望の方は1番を押してください」といった音声を自動で流すことも可能だ。

 顧客が押した番号に応じて、本人確認など次のステップに案内する仕組みは、フローチャート形式で構築できる。CRM(顧客管理関係システム)などと連動して、電話の主との取引履歴を呼び出した上で、最適なオペレーターの端末に対応を振り分ける機能も持つ。

 喜納さんはこの仕組みをうまく使うため、店舗とは別に、豊富な知識・経験を持つ定年後人材をオペレーターとして集めたコールセンターを新設。顧客から来た電話は全て、店舗ではなく同センターにつながり、最初はオペレーターではなく自動音声が対応する仕組みを採った。

 自動音声では、要望に応じた番号を押すよう案内。並行して、過去の顧客対応のデータベースから相手の情報を取得し、「どんな人が何を求めているのか」が分かるようにした。一連の情報は、オペレーターのPCやスマホにプッシュ通知として表示する他、Amazon Connectの「Whisper」(ささやき)機能も活用し、オペレーターのヘッドセットに音声として流す仕様にした。

photo Amazon Connectの特徴(出典:AWS公式サイト)

 これらの手順によって、オペレーターは顧客の属性を把握し、必要な資料などを準備した上で電話に出られる。ただでさえ経験豊富な定年後人材が丁寧に対応するので、「質問の7〜8割は解決し、支店につなぐ機会をかなり減らせます。これにより、行員は店頭での接客の質をより高められます」(喜納さん)という。

 顧客が支店につなぐことを希望した場合は、対象部署の行員が参加するWorkplace by Facebookのグループチャットに、先方の氏名と要望をテキストで送信する。行員は内容に応じて、最適と考えられる人に割り振ることで、電話対応の質も高めている。

わずか2〜3週間で構築

 喜納さんは「従来は、行員の経験によって電話対応に差があり、顧客から『支店によって言っていることが違う』とお叱りを受けることもありました。ですが、今回の仕組みによって、質をかなり均一化できたと考えています」と自信を見せる。

 この仕組みの構築に要した期間は、わずか2〜3週間程度。過去にプログラミング経験があったとはいえ、かなりの速さだ。「まだまだできる」という、復帰をすすめた伊禮さんの見立ては的中した。

 だが、琉銀内には「本当は喜納さんが担当したのではなく、システムを外部のベンダーから買ってきたのではないか」と誤解する人や、「IT部門ではなくユーザー部門の所属なのに、どうして行内のシステム構築をやるのか」と疑問をもつ人もいたという。

 一部にこうした意見があった他、運用ルールの策定やテスト、承認などに時間がかかったため、喜納さんが琉銀オリジナルにカスタマイズしたAmazon Connectは、完成から導入までに約1年半もの月日を要してしまった。

photo 琉銀の電話システムの概要図(出典:琉球銀行)

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