ヤフーは7月29日、子会社アスクルと経営などを巡って対立している件について、同日時点での状況を発表した。ヤフーは、近年の業績不振などを理由に、アスクルが8月2日に開く定時株主総会で岩田彰一郎社長らの再任に反対する議決権を行使。アスクルから「少数株主の意向を無視している」などと批判を受けたが、29日には、アスクル株を少数保有する資産運用会社のレオス・キャピタルワークス(株式数は非公開)もヤフーの方針に賛同したという。「支配株主の横暴」を主張していたアスクルは、さらに厳しい立場に置かれた形だ。
ヤフーの開示資料によると、レオスは「アスクルの業績向上と株価向上のために、議決権行使についてのヤフーの判断を支持する。株主総会以降、速やかにアスクル(と大株主であるヤフー)が適切なガバナンス体制を構築することを期待しつつ、少数株主の利益の確保が果たされているかを注視していく」とコメントしている。
ITmedia NEWSはレオスに対し、ヤフーを支持した理由についてのコメントを求めたが、レオスは「開示資料に記した以上のコメントはできない」とした。
ヤフーは現在、アスクルの約45%(議決権ベース)の株式を持つ筆頭株主。ヤフーに加え、約11%の株式を持つ第2位株主プラスも同様の議決権行使を発表しており、岩田社長の退任はほぼ決定的になっている。
これに対しアスクルは、現体制の維持に向けた最終手段として、ヤフーに株式の売り渡し請求権を行使するため、8月1日午後に取締役会を招集する予定だ。それに先立ち、29日には独立社外取締役らが「(ヤフーの決定を)深く憂慮する」「上場子会社のガバナンスを蹂躙(じゅうりん)している」とのコメントを出すなど、敵対的な姿勢を貫いている。
これを受けたヤフーは、7月29日付の開示資料で、議決権を行使した理由をあらためて説明。「岩田社長は過去に経営目標を実現できずに撤回するケースがあり、指導力・実行力に疑問を持ったため」としている。
アスクルでは2017年2月に埼玉県三芳町の物流拠点で大規模な火災が発生し、焼損した設備などを巡る特別損失として約112億円を計上。同年5月期の営業利益(連結、以下同)は前期比4.1%増の88億6500万円だったが、最終利益は80.7%減となる10億1400万円に落ち込んだ。
岩田社長は、同年7月の決算発表の場で「19年5月期はV字回復」「過去最高益を目指す」といった前向きな目標を掲げたという。しかし18年5月期は、サービスの復旧によって最終利益は前期比約4倍の46億9300万円まで戻したものの、新設した物流拠点の維持コストなどがかさみ、営業利益は52.7%減の41億9200万円に低下。同社長は一連の目標を撤回した。
19年5月期の業績も、営業利益は7.8%増の45億2000万円、最終利益は90.7%減の4億3400万円となり、両指標ともに火災前の水準に戻すことはできなかった。ヤフーは開示資料でこうした点を列挙し、「『低迷する業績への責任』が岩田社長らの再任に反対する最大の理由」と強調した。
またヤフーは、同社が岩田社長に退陣を求める旨を記したプレスリリースを発表した7月17日以降、アスクルの株価が上がっていることを指摘。16日は2323円だった終値が、17日には2606円、26日には2777円に上昇したことを示し(29日の終値は2804円)、「新しい経営体制の下での抜本的な経営改革を通じた業績回復と企業価値向上への期待が、株式市場に結果として現れている」などとした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR