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AI時代のキャリア形成 仕事を奪われない人材になるには?よくわかる人工知能の基礎知識(4/4 ページ)

» 2019年08月07日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]
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従業員の反発と業務の置き換え

 最後に、従業員の反発を防ぐにはどうすればいいか。企業は従業員を地道にAI人材化していくことになるだろう。

 企業にとって、業界知識や社内文化などを身に付けた従業員は貴重な存在だ。それをうまく配置転換し、新たな付加価値を実現できるか、単に解雇して人件費を削減するのかによって、会社の将来が大きく変わってくる。

 簡単な話ではないが、「AI戦略2019」で示された政府の人材育成支援策のように、さまざまな支援や理論の構築、ベストプラクティスの共有が行われるようになるはずだ。

 この取り組みがうまくいくかや、企業内で既存の従業員がどのようなキャリアを歩むようになるかで、「AIが人間の仕事を奪うのではないか」という疑問への答えは大きく変わってくる。その意味で、この問いへの答えはこれからの私たちの取り組み次第で決まるといえる。

AI時代のキャリア構築

 転職サービスのエン・ジャパンが、2016年8月に「AIによって失業者は増えると思いますか?」というアンケートを行った。アンケートに回答した人々の中で、「AI失業」を予想していたのは、ちょうど半分の50%だった。特に若い世代がAI失業を懸念しており、50代の40%に対し30代は58%と、20ポイント近く差が開いている。

 面白いのは、同じアンケートの3番目の質問「今のご自身の仕事は近い将来、AIに代替されてなくなってしまうと思いますか?」に対する結果だ。先ほどの質問では、半数の人々がAI失業を予想していたが、自分の仕事がなくなると思うかという質問に「はい」と答えたのは、全体のたった17%。「AIによって仕事を失う人も出てくるだろうけど、自分の仕事に差し迫った危険はない」と感じているようだ。

 確かに自分の仕事を念頭に置いた場合、具体的な業務内容を想像できるため、「いくら技術が進んでもこの仕事をAIができるわけない」と考えるのは当然だろう。しかも現状はAIによって仕事がなくなるどころか、新たに技術者や専門家を雇ったり、パイロットプロジェクトに協力させられたりと、逆に増える一方だ。

 しかし前述のように、テクノロジーの進化とノウハウの蓄積、そして優れた業務設計によって、意外な形でAI活用が進むだろう。初めはケアが必要な新人や後輩のようにAIと接していても、やがて自分の仕事を引き継げるほど彼らが成長するかもしれない。

 図で示した「AI展開後」の時期に入ったときに、AIを活用することのない従業員(領域A)のままではなく、AI開発・運用や活用の設計に携わる人材(領域B)になっているか、少なくともAIのパートナーとして活躍できる人材(領域D)になっているように、キャリアを再構築していくことが求められるだろう。

著者プロフィール:小林啓倫(こばやし あきひと)

経営コンサルタント。1973年東京都生まれ、獨協大学外国語学部卒、筑波大学大学院地域研究研究科修士課程修了。システムエンジニアとしてキャリアを積んだ後、米Babson CollegeにてMBAを取得。その後外資系コンサルティングファーム、国内ベンチャー企業などで活動。著書に『FinTechが変える! 金融×テクノロジーが生み出す新たなビジネス』(朝日新聞出版)、『IoTビジネスモデル革命』(朝日新聞出版)、訳書に『テトリス・エフェクト 世界を惑わせたゲーム』(ダン・アッカーマン著、白揚社)、『シンギュラリティ大学が教える 飛躍する方法』(サリム・イスマイル著、日経BP社)など多数。


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