ITmedia NEWS > 社会とIT >

AIが瞬時に株取引、為替暴落の危険も 金融業界で進むAIの取り組みよくわかる人工知能の基礎知識(4/5 ページ)

» 2019年12月13日 07時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

AIが保険料を算出、自動車修理は30秒で見積もりも

 金融機関はさまざまな金融商品を開発して顧客に販売しているが、商品自体を成立させる手段としてもAIが活用されている。

 最近の保険商品の進化を例に挙げよう。単純化してしまえば、保険とは将来起きるかもしれない問題に備えて一定のお金(保険料)を蓄えておき、その問題が発生したときに補填(保険金)を受け取るという仕組みだ。

 保険会社は、問題が発生するリスクを正確に見極め、それに見合う保険料・保険金の額を設定することが重要になる。そこで彼らは、これまでも多くのデータを集め、アクチュアリー(保険数理士)などの専門職を用意して分析を行ってきた。

 近年のデジタル技術の進化によって、そうしたデータ収集と分析を高度化し、保険商品に反映することが可能になった。自動車に搭載したセンサーからデータを集め、車両の状態や走行距離に合わせて自動車保険の保険料を変えたり、同じことをウェアラブル端末などを通じて人間に対して行い、生命保険の保険料を変えたりする商品が既に登場している。

 AIを使った事例も多い。例えば米Lapetusが提供する生命保険会社向けプラットフォーム「CHRONOS」は、顧客(被保険者)から送られてきた顔写真を顔認識技術で分析し、性別、年齢といった基本情報に加え、BMIや喫煙者かどうかまで割り出してくれる。肌の状態などから「老化率」も割り出し、実年齢や喫煙習慣以上に老化が進んでいないかどうかも判断する。

 保険会社はこれらの情報を活用して保険料や保険金を設定する。被保険者にとっても、審査に長い時間が掛かったり、ウェアラブル端末を装着したりする必要がなくなるメリットがある。

 また、損保ジャパン日本興亜とAI開発を手掛けるイードリーマーは11月、損傷を受けた自動車の画像をAIが解析し、瞬時に修理費用を見積もる「SOMPO AI修理見積」のサービスを始めた

「SOMPO AI修理見積」利用イメージ

 アプリを使って事故を起こした車両の損害箇所を撮影・送信すると、AIが画像を解析して概算修理金額を算出するというもの。従来は1〜2週間掛かっていた見積りが30秒程度で済み、保険金支払いまでの時間も削減される。

 金融は情報そのものを商品として扱う業界だ。AIを活用することで、今後さらにユニークな商品が実現されるだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.