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» 2020年01月05日 12時49分 公開

Googleさん:人間の医師を超えるGoogleのAIヘルスケア、その舵取りは?

Googleが元旦に、AI採用の乳がん検診ツールに関する論文を発表。ヘルスケアに本気で取り組む意気込みを見せました。医療機関向け患者データ検索ツールも開発中です。

[佐藤由紀子,ITmedia]

 Googleさんが1月1日に乳がん検診をサポートするAIシステムについての論文を発表しました。「1年の計は元旦にあり」てなわけで、今年はヘルスケアをがんがんやっていくぞ、という意気込みを感じます。

 health Google HealthのWebサイト

実はだいぶ前からヘルスケアに取り組んでいるGoogleさん

 Googleは10年以上前からヘルスケアに取り組んでいましたが、DeepMind買収あたりからギアチェンジしたと思います。医療用スマートコンタクトレンズを発表したのもこのころ。

 lens 2014年に発表した医療用スマートコンタクトレンズ

 で、昨年にはギアがトップに入った感じです。1月にベテラン医師でマネジメントのMBAも持つデビッド・ファインバーグ博士をGoogle Health部門のトップに迎え、9月にはDeepMindのヘルスケアチームをGoogle Healthに統合しました。

 feinberg デビッド・ファインバーグ博士

 11月にはフィットネストラッカーのFitBitの買収を発表しています。

 11月の「プロジェクトナイチンゲール」騒動も記憶に新しい。Googleが病院グループ大手Ascensionの数千万人の患者データに、医師や患者が知らないうちにアクセスしているとWall Street Journalが報じたというものです。Googleはこれは合法的(その法律「HIPAA」は1996年に作られたので現状に即してない)なもので、規制当局と協力してちゃんとやっていくと説明しました。

 検索が得意でAIにも強いGoogleさんが医療ツールを作ったらすごく便利そうです。冒頭で紹介した乳がん検診ツールも、テストでは人間の専門医より確度が高かったとGoogleは言ってます。画像解析ならAIの方が人間より得意そうなことは、私でも想像できます。このツールは、人間の医師を不要にするのではなく、あくまでも医師のサポート役で、専門医はこのツールのおかげで空いた時間を人間にしかできないことに割けるようになります。

 Google Healthのトップに就任したファインバーグさんは、同部門の使命は「すべての人が最も健康な生活を送れるようにすること」で、Googleの使命「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスして使えるようにすること」の延長上にあると言います。

 私たちは既に、最寄りの病院や薬の効用などについてググっています。もしGoogleさんに自分の病院のカルテ情報やお薬手帳の履歴、フィットネストラッカーのデータなども全部提供すれば、自分にぴったりの病院や健康法などの役立つ情報が検索結果として出てきそうです。ファインバーグさんはそういう未来について語っています。

 Googleは現在、患者のすべての医療記録を一元管理できるようにするAI採用の医療機関向けツールを、複数の医療機関と協力して構築しています。11月に公開されたYouTube動画を見ると、さすがGoogle、な便利さ。

 youtube 1 患者の情報が一望できる医師向けダッシュボード

 患者が過去に受診した様々な病院でのカルテ(たいていは分散していて探すのが大変)はもちろん、それまで投与された薬とそれに対する患者の反応などもすぐに表示。Google検索でお得意のインクリメンタルサーチで、面倒くさい薬の名前も候補が出るし、いちいちクリックしなくても検査結果の項目名にカーソルを合わせるだけで数値が表示されたり。Google Lensでおなじみの、画像の文字をテキスト化する機能で、手書きカルテの単語もばっちり検索結果に出てきます。

 youtube 2 手書きのカルテ内の単語も検索結果として表示されます

 これはまだパイロット版で、使っているデータは実際のものではない(だから患者名が日本の「山田太郎」に当たる「John Doe」になってます)そうですが、お医者さんだったら使いたいだろうな。

 AIでヘルスケアは確実に向上するでしょう。問題は、それをGoogleさんに任せていいのか。かつての、ペイジ&ブリンがDon't be evilを掲げていた時代のではなく、現在のGoogleさんに。

「GoogleのモットーはDon't be evilではなくなった」と元幹部

 従業員10万人以上で株式公開している大企業なのだから、利益を上げ続けなければならないのは当然です。でも、利益追求とDon't be evilとの両立はもう限界なのかもしれません。だから、ペイジ&ブリンはGoogleから離れたんだと思います。

 乳がん検診ツールの論文が公開された翌日の1月2日、元Google幹部(国際関係の責任者)のロス・ラジュネスさんがMediumでGoogleを昨年5月に辞めた理由を説明しました。

 ross

 これまでも多数の従業員が「Googleは変わった」と言って去っていますが、これだけトップに近かった人が内部の問題を説明するのは珍しいです。ラジュネスさんはこのブログで、Project Dragonflyに激しく反対したこと、Google Cloudのチームが他のチームからのチェックを受けられないよう独自のポリシー担当者を雇おうとしていること、不公正な人事について人事部や上級管理職に何度も問題提起した結果、国際関係責任者の職から外され、弁護士を雇ったらようやく“小さなポジション”を提示された(それで退社した)ことなどが綴られています。

 ラジュネスさんは、支配的な株主の方ばかり向くようになった大企業に、人々の生活に深く関わる多様なサービスを任せるのは危険だと警告します。彼は現在、上院議員(メイン州、民主党)に立候補すると表明しています。中から止められなかったGoogleの変質を、議会側から止めようと考えているのかもしれません。

 Google Healthのトップ、ファインバーグさんは、経歴やインタビューを見る限り、本当に医療のために尽力するつもりだと見受けられますが、医療ツールにはGoogle Cloudチームとの連携が必須です。そして、Google Cloudチームを率いるのはGoogleとはかなり異なる企業文化を持つOracleの元プレジデント、トーマス・クリアンさん。「Project Maven」を推進していた前Google Cloudトップのダイアン・グリーンさんもまだAlphabetの取締役です。

 医療関連は信用第一なので、透明性を保ってDon't be evilで行けば結果的に利益もついてくると素人としては思うんですが、それは甘いんでしょうか。

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