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» 2020年03月11日 12時00分 公開

輸血パックが空を飛ぶ 「アフリカの奇跡」、急激な近代化を果たした小国・ルワンダが進めるICT立国の今 (1/2)

急激な近代化を果たし、「アフリカの奇跡」と呼ばれるに至った小国・ルワンダ。ICT立国を掲げている同国を取材し、どんなIT企業が活躍しているかを見てきた。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

 急激な近代化を果たし、「アフリカの奇跡」と呼ばれるに至った小国・ルワンダ。特に近年は、ICT立国を掲げてIT系企業の誘致や育成を積極的に行っている。ルワンダでは今、どんなIT企業が活躍しているのだろうか。現地を取材したところ、医薬品のドローン配送システムが構築されつつあることなどが分かったが、一方でそうした近代化の裏で同国が抱える課題も見えてきた。

混乱から一転 急激な近代化で「アフリカの奇跡」に

 ルワンダという国について、おそらく最も有名なのは映画「ホテル・ルワンダ」でも描写された同国の激しい内戦や、それに伴う虐殺事件だろう。内戦の火が上がったのが1980年代後半で、その後の和平協定と破棄から虐殺事件や大統領暗殺が続き、現政権のポール・カガメ大統領が就任する2000年までは「混乱期」と呼ばれる。同作で描かれた、混乱期を生き抜いたホテル「オテル・デ・ミル・コリン」は今も首都キガリの中心部で営業を続けている。

映画「ホテル・ルワンダ」の舞台から首都キガリの夜景を臨む

 内戦へと至る混乱の要因は、植民地時代を経て独立後も大きな産業や資源もないことからくる国の貧しさと、分断された民族だ。こうした社会不安がやがて不満となり、後の虐殺事件へとつながる。

 このため、現政権が成立してからのルワンダ政府は社会システムの安定を目標に外資を積極的に受け入れつつ、分断された国民の統一、周辺国を参考にした産業の育成などを過去20年にわたって推進してきた。そのかいもあってか、同国は「アフリカの奇跡」と呼ばれるほどに急速な復興を果たし、周辺道路は整備され、アフリカでもトップクラスの「安全できれいな国」といわれるまでになった。

 一方で、輸送の面では不利な内陸国であり、国土は四国の1.5倍程度。面積のほとんどが丘陵地帯で大規模な耕作には向かず、あるのは限られた鉱物資源のみ。東アフリカの他の大国のような大自然をテーマにした観光資産にも乏しい。アフリカで一番の人口密度の国としても知られているが、それでも1300万人程度であり、平均で年間400米ドルといわれる国民の所得を考えれば、市場としての魅力も乏しい。

 こうした不利な条件においても他国と渡り合ってルワンダが将来的に成長を続けられる方法を模索する中、現在は「ICT立国」を掲げ、海外企業の誘致やスタートアップ育成を目指している。

1990年代のルワンダ紛争で中心的存在となった「オテル・デ・ミル・コリン」

 ルワンダ政府では自国を社会実験、いわゆる「PoC」(Proof of Concept)の場として提供することでIT分野などの先端企業を呼び寄せ、これに自国の企業や人材を絡ませることで産業や技術の全体水準を引き上げることを目指している。今回筆者は、こうした取り組みに合わせて同国とICT協定を結んでいる神戸市が主催する現地起業体験プログラム「神戸スタートアップアフリカ」ツアーに参加し、現地の最新スタートアップ企業を訪問した。

血液を飛行機型ドローンで輸送 3時間かかる陸路を15分で

 米国で創業されたスタートアップのZiplineは、PoC実践の視点からルワンダでの成功事例の1つだ。ドローンを使った配送システムを構築し、ルワンダでは血液などの医薬品を短時間で目的の場所まで運ぶための手段として用いられている。

 滞空を目的としたコプター型のドローンではなく、通常の飛行機型の高速飛行を行い、目的地に近づくとパラシュートが取り付けられたパケットを地面に向けて射出し、再び出発地点へと戻ってくる。

 前述のようにルワンダはアフリカでも道路事情が比較的良い国で、幹線道路は国土に広く整備されているが、片道一車線で登坂道も多くよくトラックが渋滞を起こしていたりする。高速走行にも向かないため、緊急を要する荷物においてドローン輸送という需要が発生する。

 現在Ziplineはルワンダの保健省と組む形で輸送業務に従事しており、同国の緊急輸送を担っている。これにより、通常であれば3時間以上かかるような場所であっても10〜15分ほどで到達が可能となる。

ドローン配送スタートアップZiplineはルワンダでの成功事例の1つとして知られる

医療の予約を携帯アプリから 2020年にはAI搭載スマホアプリも

 もう1つ、ルワンダ政府と組む形でヘルスケアサービスを提供するのがBabyl Health Rwandaだ。

 同社は、英国のヘルスケアスタートアップBabylon Healthの現地法人だ。Babylon Healthは、スマートフォン向けアプリ上で顧客の健康診断を行うAIチャットbotを用意し、医療機関への窓口業務を担うサービスを提供している。

 しかし、ルワンダのスマホ普及率は高くない。このため、ルワンダ国内の展開に当たってはフィーチャーフォンでの利用を想定した作りとしたと、同社のパトリック・シンガ・ムホザ氏は説明する。

 ルワンダ向けにはチャットbot機能を外し、テキスト選択メニューを経て、音声によるコールバックで医療機関への予約処理などを進める。

 英国で展開しているビジネスコンセプト自体は、現在ルワンダで提供しているサービスには生かされていない。ただパトリック氏によれば、ルワンダではスマホが急速に普及しており、現時点で人口比80%という携帯電話普及率の過半数がスマホユーザーだという。Babylでもすでにルワンダ向けAI機能の開発が完了間近とのことで、2020年中にもスマートフォンアプリ版としてサービスが提供される。

デジタルヘルスケアサービスを提供するBabyl Health Rwandaのパトリック・シンガ・ムホザ氏
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