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» 2020年04月07日 19時05分 公開

新型コロナで苦しむ飲食店を救えるか 食事代の先払いサービスを生んだ音楽プロデューサーの思い (2/2)

[濱口翔太郎,ITmedia]
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「人々の衣食住に寄り添える事業がしたい」

 両サービスへの思いを熱く語る今井さんだが、本業は音楽プロデューサーだ。ヒット曲を相次いで手掛けてきたにもかかわらず、なぜ本業とは異なるフードテック事業に興味を持ったのだろうか。今井さんによると、その理由は「11年の東日本大震災で『音楽は無力だ』と感じたこと」だという。

 当時は国民を勇気付けるべく、多くのアーティストが「音楽の力で人々を元気に」といったメッセージを発信していた。だが、日本の状況を鑑みた今井さんは「音楽は、人々がある程度健康で、経済が安定していてこそ楽しめる娯楽。(有事の際に)音楽は無力だ」と感じ、「人々の衣食住に寄り添える事業がしたい」と痛感したそうだ。

photo 今井さんの実績(=Gigiの公式サイトより)

 今井さんは震災後も「HERO」などのヒット曲に恵まれたものの、その思いは変わらず、できることを模索していた。そうした中で、18年頃、あるメディアの報道で北海道・帯広にあった飲食店「結(YUI)」を知った。結は、余裕のある客などが、見ず知らずの客の食事代を先払いすることで、希望者が無料でご飯を食べられるサービス「ゴチメシ」を行い、地元で人気店になっていた。

 今井さんは報道を見て「これだ!」と感じ、すぐさま現地に飛んで店主と会談。小さなエリアで支持されていた仕組みを、ネットの力で全国に広める方向で意気投合し、名前を使わせてもらえることも決まったという(商標は共同で出願)。こうした経緯で開発が始まり、離れた場所にいる人たちが食事を贈り合ったり、新型コロナの影響による売上減に苦しむ飲食店を応援したりできるサービスが生まれた。

地方自治体からオファーも

 そんな今井さんのもとには現在、地方自治体などからオファーがあり、さきめしを活用して地方の飲食店を支援する計画が進んでいるという。音楽制作の仕事も続けているため両立はかなりハードだというが、今井さんは今後も、新型コロナの影響で客足が遠のく飲食店をサポートすべく、加盟店とエンドユーザーの獲得に注力する考えだ。

 ゆくゆくは、サービス運営のノウハウを「アーティストのファンクラブ運営やコンサートなどにも生かしたい」と今井さんは語る。エンターテインメント業界でも、新型コロナの感染拡大によって公演のキャンセルが相次ぎ、売上が落ち込んでいる企業は多い。今井さんが取り組む「人々に寄り添う事業」は、飲食店にとどまらず、多くの企業の助けになりそうだ。

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