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在宅ワークの孤独に対抗してプロジェクションマッピングで“バーチャル職場”を作り出すデータサイエンスな日常(3/3 ページ)

» 2020年05月12日 07時00分 公開
[篠田裕之ITmedia]
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 検証では、「プロジェクションマッピングなし」「プロジェクションマッピングあり」「ありの場合、同僚の人数を0人から、1、2人と追加で投影したとき」のそれぞれの場合で脳波がどのように変化するかを計測した。

 計測は、「何もしないとき」(休憩時を想定)、「簡単な入力作業(就業時を想定。今回は各試行において条件をそろえるため、任意のニュース記事をそのままタイピングする作業)を行っているとき」の2パターンで行った。

 脳波は、各パターンにおいて1分間の計測を3回行ったものの平均を使用し、連続した値や外れ値を除外した上で集計した。脳波の分析においては、β/α値がリラックス(緊張)度合いの目安となることが報告されている(※1、※2)。そこで、今回の検証でもβ/α値を用いることにした。

※1:平井章康、吉田幸二、宮地功「簡易脳波計による学習時の思考と記憶の比較分析」、DICOMO2013、2013

※2:大久保友幸、山丸航平、越水重臣「携帯型脳波計を用いた観光客の印象検出システムの開発」、日本感性工学会論文誌、2018

 脳波検証結果は以下となる。

 まず、動作なしの休憩時の結果を比較してみる。

 その結果、興味深いことに、「プロジェクションなし」よりも、「プロジェクションあり(人物0人)」のほうが、わずかながらβ/α平均、β/α分散ともに低く、リラックスできていることが分かった。何もない白い壁だけを前にすると、孤独感や不安感があおられるとともに、机の書籍や段ボールの文字などに視線が移ってしまいがちなのかもしれない。それならば静止画でもいいので何か投影するとよいのだろう。

 動きを伴う人物を投影する場合は、1人よりも2人のほうが、β/α平均は低かった点にも注目したい。1人の動きだけの単調なループよりは、2人の動きによって多少複雑性があったほうがストレスは少ないのかもしれない。なお、β/α値の分散は、人物2人を投影した際に大きく増加しており、脳が活性化していることが分かった。ゆっくり落ち着きたい休憩時は人物なし、気分転換したいときは人物を2人投影するなど使い分けするとよさそうだ。

 作業時は、どうだろうか。

 プロジェクションマッピング時は、β/α値の平均、分散ともに大きく、特に人物投影時に外部刺激により脳が活性化されていた。ただし、その分、注意が分散している可能性が高い点に気をつけたい。プロジェクションをする場合、人物なしよりも、1人投影した場合にわずかながらリラックスできているようだ。

 今回はあくまで簡易脳波計を使った分析であることに留意してもらいたい。私自身、脳波を用いたプロジェクトに関わったことはあるが専門家ではない。詳細は、より測定精度の高い脳波計を用いて専門家の立ち会いのもと計測・分析する必要があるだろう。

「疑似居酒屋zoom飲み」も可能

 今回構築した環境は、プロジェクションマッピングによるものであるため、容易に雰囲気を変えられる。例えば、食堂カフェのような場所に置き換えた場合、以下のようになる。

 近頃は「Zoom飲み」が盛んだが、この環境はZoom飲みでも大きな効力を発揮する。居酒屋風の素材を配置すると下記のようになる。

 いかがだろうか。昨今の過酷な状況はまだ当面続くと思われるが、最大限、在宅ワークを楽しむことを心掛けたい。

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