このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
AIベンチャーのPreferred Networks(PFN)とカナダ・ウォータールー大学による研究チームが開発した「PenSight」は、タッチペン上端に魚眼カメラを取り付け、両手のジェスチャーを認識できるようにしたシステムだ。
魚眼カメラをタッチペンの上部に取り付けることで、タッチペンを通常利用しながら両手のポジションを検出し、ジェスチャー操作を可能にする。
プロトタイプは、180度魚眼レンズを備えた単一のカメラモジュールと、3Dプリンタで印刷した接続部品で構成する。
手の位置と形状の予測には深層学習を用いて分類し、手とペン間の相対距離を決定するための回帰、そして指先を識別するためのキーポイント検出を行う。
このシステムでは、タッチペンを使用する際の拡張機能として多様な操作が行える。例えば、タッチペンを持つ手・持たない手でのジェスチャー入力、環境内の物理コンテンツの検出、タブレットグリップの検出など、さまざまな組み合わせで操作が可能だ。
今回のプロトタイプで取り付けたカメラは、USBケーブルを用いてコンピュータと接続しており、理想的な形とはいえない。ワイヤレスカメラにすると、全体の重量や大きさとのトレードオフになるため、無線化は今後の課題としている。
研究チームは、この課題を解決するための将来に向けたコンセプトアイデアを2つ提案している。
1つ目は、タッチペン上部に視野角180度の広角レンズカメラを2台上下に向けて搭載するアイデア。今回のプロトタイプと違い、タッチペンの途中を透明ケースに収納し距離を確保しており、そのためキャプチャ時によけいな接続部品が映り込まない。
2つ目は、1つ目同様タッチペンの途中部分を透明にした上で、下部に上向きカメラを設置し、上部の曲面ミラーで反射と屈折を利用し検出するというもの。曲面ミラーにより広視野角サポートが可能になると見込んでいる。
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