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「RISCだったら自分たちで作れるんじゃね?」で始まった、自家製RISCプロセッサの興隆RISCの生い立ちからRISC-Vまでの遠い道のり(3/3 ページ)

» 2020年07月06日 11時01分 公開
[大原雄介ITmedia]
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 x86も同じで、486とかPentiumクラスの性能のものはお目こぼしがある(前述のRDCとか、台湾DM&P ElectronicsのVortex86など)が、それより高い性能を持つプロセッサはIntelから猛烈な攻撃を食らう、という話はAMDやVIA Technologiesの歴史をご存じの方なら容易に理解できるかと思う。

 MIPSとPowerPCは、まずMIPSが2018年にOpen MIPS Initiativeを立ち上げたものの、1年持たずに敗退した

 PowerPCの方は、まず2013年にOpenPower Consortiumを設立。ここで命令セットのライセンシングなどを狙うが、うまくいかなかった。結局2019年にOpenPOWER Foundation(途中で名前が変わった)はLinux Foundationに寄贈され、ここで完全なオープン化が図られることになるが、これを採用して新規のプロセッサを作ろうとしている話はあまり聞かない。

 唯一実装例があるのがSPARCである。Sun Microsystems(Oracleによる買収前)は早いタイミングでCPUのアーキテクチャの策定をSPARC Internationalという別の組織に移管していたが、2005年にこれとは別にOpenSPARCというオープンソースプロジェクトを立ち上げ、ここにUltraSPARC-T1のソースコード(RTL)を寄贈。のちにUltraSPARC T2のソースコードも寄贈している。

 このOpenSPARCそのものが活躍したわけではないのが皮肉なのだが、1997年にSPARC V8互換のプロセッサであるLEONというプロセッサが、ESA(European Space Agency:欧州宇宙機関)委託を受けていたGaisler Researchという会社によって開発された。

 これは衛星向けのもので、高い放射線環境にあっても稼働するようなものだが、こうした環境でもより高い性能がプロセッサに求められるようになった結果、新たにSPARC V8ベースで開発を行ったというものだ。このLEONはその後LEON 2/3/4/5と次第に高性能化していくが、その途中でOpenSPARCが始まった結果として、SPARC Internationalにライセンスを支払わずに自由に使うことができるようになったという、ちょっと異色のコアである。こちらは現在も航空宇宙分野に広く利用されているが、ただその程度でしかない。

 そんな訳で、32bit以上のRISCコアに関しては、Armなりその他のIPベンダーからCPU IPを購入して使うか、もしくは自分でコアとソフトウェアエコシステムの両方を作るか、の2択になっていった。

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