ではIaaS市場のリーダーの1社、AWSの動きを整理してみよう。
06年に「Simple Storage Service」(S3)と「Elastic Compute Cloud」(EC2)を発表し、現在の大手事業者の中で真っ先にクラウド市場に参入したAWSは、まさしく市場をけん引する存在だ。S3はストレージ、EC2は仮想サーバで、この2つを皮切りとしてAWSはサービスの拡充に力を入れてきた。20年度第一四半期のAWSの売上高は100億ドル(約1兆円)を突破。14年度第1四半期の売上は約10億ドル(約1070億円)であり、6年間で10倍に成長した。
AWSがここまで急成長できた理由の一つに、業界の先を行くサービスを継続的に発表してきたことがある。ガートナーが「マジック・クアドラント」で解説している通り、他社に先駆けてクラウドサービスのビジョンを示し、同時にそれを実現する技術力を示してきた。
例えば、19年に発表した「Amazon Detective」は、「Detective」(探偵)の名が示す通り、AWSの利用時に、潜在的なセキュリティ問題や不審なアクティビティーの根本原因を簡単に分析・調査し、素早く特定するサービスだ。AWSの各種サービスから出力されるログデータを自動的に収集するとともに、機械学習や統計分析、グラフ理論といった手法によって分析し、セキュリティ調査を迅速に行える。
また「Amazon Augmented Artificial Intelligence」(Amazon A2I)の一般提供も始まっている。これはAI(人工知能)に関するフルマネージド(完全保守運用代行)型のサービスで、機械学習によって構築された予測モデルの精度を、人間のオペレーターが目視で確認して結果を返してくれるというもの。企業のAI開発を支援するサービスは他社も積極的に展開しており、もちろんAWS上でも各種関連機能を提供しているが、AWSはその運用面まで支援する姿勢を示している。
AWSはエッジコンピューティングへの対応にも注力しており、今年6月に「AWS Snowcone」を発表した。同社のエッジコンピューティング用デバイスの製品群「AWS Snow」ファミリーの最新機器で、同ファミリー内で最も小型で軽量とされている。エッジロケーションでは、通常のデータセンターに備えられているような電力やスペース、冷却設備が期待できないことが多い。Snowファミリーはそうした環境でも各種アプリケーションをデプロイ可能にするものだが、さらに小型の製品が登場したことで、よりエッジコンピューティングの可能性が広がると考えられる。
もちろんこうしたAmazonのイノベーションが、すぐ業界のスタンダードになると決まったわけではない。しかしIaaSの将来を予測したければ、AWSが打ち出す最先端の機能やサービスを追うことが欠かせないだろう。
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