実際このRaven-3に搭載されていた、Chiselで設計されたRISC-V対応RocketコアはCortex-A5と比較しても遜色ない性能を実現できるとしている(写真7)。
Rocketコアは比較的シンプルなパイプライン5段の構成であるが(写真8)、このRocketのソースコードは誰でも入手し、これをそのまま利用して自身のコアを製造することもできるし、カスタマイズしても構わない。2018年にはやはりChiselで記述され、Out-of-Orderを実装したBroom(Boomという名前も発表に出てくる。どうも設計途中はBoomで、完成したコアはBroomになったらしい)というコアも発表されており、こちらもRocket同様にGitHubで公開されている。こうしたリファレンスの存在は、「自身でコアを作りたい」というメーカーにとっては、開発期間短縮の大きな助けになった。
もちろんこれは相応に技術力のあるメーカーでないと意味がない話で、「誰でも使えると聞いてFPGAに入れてみたけど動かない」なんて話は煩雑に耳にする。Chiselにしても、これを使いこなすにはある程度VerilogやVHDLの経験が必要だからだ。ただ、これは自前でCPU IPを提供していたベンダーには十分な資料であり、かくして台湾Andes Technologyや仏Cortus、チェコのCodasipといった、それまで独自のCPU IPを提供してきていたベンダーが一斉にRISC-Vに飛びついたのも無理ないところである。
それだけでなくNVIDIAとかWestern Digitalといった「IPの販売は行っていないが、自社製品に自社開発のASICやプロセッサを採用している」メーカーもこれに続くことになった。例えばWestern DigitalはHDDとSSDのベンダーであるが、そのHDDにもSSDにも制御用のプロセッサが搭載されている。これまではCPU IPを外部から購入して、それを利用して自社で専用ASICを起こし、HDDやSSDに搭載していたが、こうしたベンダーもやはりCPU IPを扱える技術力を持っており、RISC-Vを採用することで、
といったメリットが生まれる。そして、こうしたベンダーがRISC-Vに参画することで、「海のものと山のものとも分からない」RISC-Vなる新しいアーキテクチャが「案外大きく成長するかもしれない」と認識されると、そこからさらにエコシステムが広がるトラクションがかかる要因が生まれることになる。次回はそのエコシステムの話を紹介したい。
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