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ロボットにあえて“足りない部分”を作る理由 ヒトとロボットのコミュニケーションのためにメーカー3社が考えた方法(3/4 ページ)

» 2020年11月09日 15時45分 公開
[石井徹ITmedia]

 avatarinの場合、コミュニケーション機能は中に入り込んだ人に依存している。newmeにはカメラやマイクがあり、遠くの人とスマホ越しで会話できる。さらにタイヤで歩き回ったりうなずいたりすることはできるが、アームは標準装備ではない。実は、アームもオプションとして用意されているが、装着しない方がコミュニケーションは活発化するという。

ロボットに手がないため、ロボットと接する人が自然と手を動かしてコミュニケーションするようになる

 アバターインの深堀氏は「例えばショッピング。アバターに手がないことで、店員さんが自然と商品を手に取って紹介してくれるようになる。三越伊勢丹や蔦屋家電でのコンシェルジュ付きショッピング体験では、実際に来店した時よりも多くの話ができたという声を得ている」と話す。

 役立つロボットではなく、“人に寄り添う”ロボットを目指す上では、足りないことは重要な要素となるようだ。

「カワイイ」はどう作る?

 「足りなさ」に続けて3社のロボットの共通のキーワードとして挙げられたのが「カワイイ」。愛されるロボットの設計について、3人は独自の哲学を持っているようだ。

 ユカイ工学の青木氏は「何年も暮らし続けて、それでもかわいいと感じてもらえる“カワイイ”を目指している」と語る。しっぽだけで生き物を表現した同社のロボット「Qoobo」(クーボ)についてこう話す。

 Qooboはロボットというよりは「尻尾がついたクッション」と形容した方が良いかもしれない。ネコのような尻尾がふりふり動くだけのクッションだが、生物のような温かみがある。ユニークなアプローチで愛着をもたらすロボットを作っているという点では、GROOVE Xと通じるものがある。

ユカイ工学の「Qoobo」(クーボ)

 「ごりごりにカワイイ顔をつけてしまうと、想像力の余白がなくなってしまう。余白を残すことで、長く愛でてもらえる」(青木氏)

 GROOVE Xの林氏は、LOVOTの設計において「愛着形成」をターゲットとして綿密な研究を行ったことを明らかにした。例えば飽きるという感情に対して、脳内でどういった作用が働き、感情が沸くのかといった段階から研究し、理詰めで愛らしいロボットを作り上げたという。その時必要だったのは、エンジニアと全く異なる思考体系を持つアーティストとの連携だった。

 「エンジニアが数カ月理詰めで練り上げた正解を、アーティストは直感で分かってしまう。テクノロジーとアーティストがコラボすることで、新しい世代のカワイイが作られていくのではないか」(林氏)

 avatarinのnewmeも、丸みをモチーフとして取り入れている。ボディーに丸いスポンジをつけて、団子串のような形状にしている。

 ヒトの形状を最大限に抽象化して、この丸みをつけているのだという。スポンジ部分は「服」としての機能も持ち、色を変えたり、素材を変えたりすることで、多様なデザイン表現も可能としている。

 avatarinでは観光地やショッピング体験など、さまざまな場所でアバターロボットの実証実験を行っているが、特に興味深いのは一般家庭での検証事例だ。個人向けサービスでは、単身赴任している人がいる家庭や子どもと離れて暮らすお年寄りの家庭にnewmeを置き、離れた場所の家族がアバターロボット越しに同じ時間を過ごすという体験を検証している。深堀氏はnewmeが家庭に溶け込むプロセスを次のように説明する。

家庭に置かれるnewme

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