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「Apple Silicon Macで4K編集」は実用に足るか?新連載「動画編集実務で計るM1 Macの実力」(2/4 ページ)

» 2020年11月30日 07時27分 公開
[小寺信良ITmedia]

 一方M1 MacBook Airでは、同じプロジェクトをプロキシではなく4Kオリジナルソースのままで9レイヤー再生できる。これまでそういうことができるのは、Mac Proか一部のハイエンドiMacぐらいしかなかったのだが、それがMacBook Airで可能になるのは驚異的だ。合計で5分10分の素材ならプロキシ編集しても時間的には大した違いはないが、素材が長尺であるほど時間的メリットが大きくなる。

photo オリジナルソースでプレビュー品質が最高でもリアルタイムで合成が走る

 旧MacBook Proでのプロキシ編集と、新MacBook Airのオリジナル編集は、レスポンス的にはそれほど違わない。ただ旧MacBook Proでの作業は、リアルタイム再生が間に合わなくなると解像度を落としたりコマを飛ばしたりして、無理矢理リアルタイムに間に合わせる処理をしてくるわけだが、新MacBook Airで同様の合成作業を行っても、解像度が落ちることもない。プレビュー品質を「品質優先」にしてもリアルタイムで走るので、クロマキーの抜け具合など細かいところも同時にチェックできる。あとで気付いて再調整という事が少なくなるのは、手間としても助かる。

 一番気になるのは、レンダリング時間の短縮だろう。実際クリエイターの設備投資金額のうち、もっとも比重をしめるのがこのレンダリング時間の短縮にかかるハードウェア費用である。

 上記28分のコンテンツをYouTube向けHD解像度でレンダリングするのにかかった時間は、旧MacBook Proでは3時間55分であった。寝ている間にやらせているので身体的な負担はないが、もし修正が発生した場合は、また一晩かかる。納期が迫っている場合には、文字通り死活問題となる。

 一方同じコンテンツを新MacBook Airでレンダリングに要した時間は、1時間16分。時間にして約3.2倍の差が生じた。4年前のCore i5に対してこの差を十分速いと見るか、意外とそんなもんかと見るかは難しいところだが、マシントータルで見れば価格的には5万円安い、下のクラスのマシンである。コスト的には十分なイノベーションと言っていいだろう。ただ逆に現時点でこれ以上のパフォーマンスを出すハイエンドM1マシンは存在しない点には留意が必要だ。

データで評価すると……

 レンダリング中の状態をもう少し細かく観察してみよう。アクティビティモニタでのCPU負荷を見ると、レンダリングタスクは94.6%で、ファイル圧縮タスクが31.3%となっている。

photo 新MacBook Airでのレンダリング中CPU負荷

 かなり高負荷で回っているのが確認できるが、特筆すべきはGPUもかなり回っていることである。旧MacBook Pro、すなわちIntel版でのレンダリングでは、GPUも回るが、50%程度である。M1ネイティブのソフトウェアでは、レンダリング処理の仕方にも工夫があるようだ。

photo Intel版MacBook Proでのレンダリング中CPU負荷

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