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ロボット配膳「焼肉の和民」、“非接触”セルフレジのくら寿司 コロナ禍の飲食店、勝機はIT&ロボット活用にあり(4/4 ページ)

» 2020年12月01日 19時00分 公開
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テイクアウトとデリバリーに特化しつつあるファミレス業界

 居酒屋同様に厳しいといわれるのがファミリーレストラン業態だ。冒頭でも紹介したチェーン店数の推移調査によれば、2019年12月時点までは上昇の一途をたどっていた店舗数は一転して減少へと向かい、6月以降はそれが加速している。

 20年8月時点でのデータで、店舗数は18年6月以前の水準まで落ち込んでおり、こちらも市場の飽和に加え、顧客志向の変化により需要減少が業績に響いたといえる。複数の関係者の話によれば、もともとコロナ禍に突入する前から業績不振の店舗はあり、今回のコロナによる業績低迷を理由に一気に店舗整理に入ったことがチェーン全体での店舗数急減につながったともいう。

 いずれにせよ、従来の営業スタイルでは店舗面積や回転率、人件費などの面で維持できない店舗は少なからず存在し、今後も大きく回復する見込みはない。そこで各社は黒字化に向け、テイクアウトやデリバリーといった、店舗面積やサービス用の人員を削減しつつも客数を増やせる業態を模索し始めている状況だ。

 その一つは、セブン&アイFood Systemsが運営するファミリーレストランチェーン「デニーズ」が10月にオープンした宅配・テイクアウト専門店の「新宿御苑店」だ。

 デニーズではEpark、UberEATS、出前館といったデリバリーサービスに対応するが、それに加えてテイクアウトに特化する形で、主に弁当や総菜の持ち帰り需要を新店舗で開拓していく。

 新宿御苑店は周辺のオフィスや住宅街のはざまにある立地で、日中の昼食需要の他にもテレワークや宅食需要などが狙える。実際、滑り出しは上々のようで、今後都市中心部や住宅街に近い立地でこうした店舗が出現する可能性は高そうだ。

デニーズの宅配・テイクアウト専門店となる「新宿御苑店」。ビジネス街と住宅街のはざまにあり、2種類の客層を取り込める立地
デニーズ新宿御苑店の店内の様子。注文用のカウンターのほか、パンや飲料などの商品を取り出すための棚がある以外は何もない

 この他、デリバリーやテイクアウトには比較的消極的だったサイゼリヤも、21年4月までに東京都内に従来比約6割の店舗面積の小型店舗を設置し、こうした需要を開拓していくという報道が出ている。ファストフードのファーストキッチンも東京の神楽坂にデリバリー専門店「ファーストキッチンZero」を設置しており、テナント料や人件費などのコストを圧縮しつつ、比較的人口の密集したエリアでの需要開拓を狙う。

業態転換か、コスト削減か

 飲食業において共通するのは、コロナ禍により客数が減少し、固定費に見合うほど売上を見込めなくなったことにある。特に営業自粛で深夜営業が難しくなっており、今後の終電時間繰り上げの影響で客足のピークは1〜2時間ほど縮小が見込まれる。多人数で飲食店を利用する件数も大きく減少したとみられ、従来のビジネスモデルのままで営業を継続できる店舗が限られつつあるのが現状だ。

 ワタミのケースが典型だが、客数の回復が見込めない以上は今後は同業者内で客の取り合いになるのは間違いない。各社の取り組みからは、専門業態のアピールなど、特徴を持たせることで差別化を図り、生き残りを目指す工夫が見られる。一方で、ファミリーレストランに見られるような「コスト削減で客数減でも生き残れる店舗を作る」という道を目指す店舗もあり、飲食業界は両極化が進むのかもしれない。

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