1つ目は、2980円という料金設定に対し、他社が追随せざるを得なくなることだ。ahamoの発表からまだ数日しかたっていないが、長らく携帯電話の販売に関わり、家族や友人の携帯料金の相談にも乗ってきた筆者のもとには「他の会社でも値下げされるのか」といった質問、相談が何件か来ている。
実際にいくつかの店舗にヒアリングしたところ、家電量販店の店頭では、発表された週の末から「ahamoの申し込み方法」や「ahamoみたいなプランは出ないのか」といった問い合わせが急増しているという。ahamoに対するユーザーの期待がこれだけ大きいとなれば、他社は追随するしかないだろう。
ドコモがメインブランドのプランとしてahamoを発表したことも大きい。「公式サイトのドメインがドコモ公式サイトと別」「端末はahamo専用サイトから購入する必要がある」などの特徴から、もともとサブブランドとして発表する計画だった可能性もあるが、いずれにせよ今後は「メインブランドの値下げ」が携帯電話大手3社の主戦場になるだろう。
もう1つは、他2社が乗り換えコストや囲い込み施策の見直しを迫られる点だ。ahamoと比べて「高い」といわれる既存の料金プランも、ユーザーが家族全員で同じ事業者を契約し、光回線のセット割引などを適用すると、1回線あたり2000円〜3000円程度安くなる。そのため、月50GBや無制限という高額なプランでも4000円台から利用でき、実際に使ってみるとその恩恵は大きい。
一方で恩恵が大きいからこそ、ユーザーはキャリアの乗り換えに「料金が高くなる可能性への不安」や「手続きの面倒さ」を感じることになる。光回線の解約に伴う撤去工事や、移行先の会社とセット割の組める光回線が利用できるようになるまでのラグを考えると、他社への移行をすぐに決めるのは難しく、サービス内容や料金の競争を大きく阻害する原因になっている。
もし他社がahamoに追随する場合、もはや料金を値下げするだけでは、ユーザーは魅力に感じないはずだ。今まで安いと思って契約していた会社よりさらに安いサービスが出てきたとき、囲い込みや乗り換えコストの影響ですぐに移行できないことは、ユーザーにとって大きなストレスになる。つまりahamoに追随する以上は、他社も囲い込みや乗り換えコストを撤廃せざるを得なくなるだろう。
ahamoが発表された翌日には、MVNOの草分け的存在である日本通信が「ドコモへの対抗」として、1980円で16GB(20GBに増量予定)の新料金プランを発表。同日には総務省の武田良太大臣が記者会見で「公平な競争環境に導く大きなきっかけだ」と、ahamoの登場を評価した。
NTTドコモの井伊基之社長はahamoの発表会で、シェアが下がり続ける現状に対し「3番手と言われないようにしていきたい」としており、競合他社に大きなプレッシャーを与えるのは間違いないだろう。
携帯業界では、新規契約者が増える春商戦が間もなくスタートする。今後はそこに向けた競争も激化するのではないだろうか。
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