今回テストで編集した動画の尺は、6分52秒である。これをYouTubeアップロード用のプリセットを使ってレンダリング速度を比較してみる。この処理には、4KからHD解像度へのダウンコンバートも含まれる。
Premiere Proはそれ単体でサブスクリプション購入しても、バッチレンダリングツールとしてMedia Encoderが付属する。だが今回のM1ネイティブ版にはMedia Encoderがなく、Premiere ProからMedia Encoderへの連携ができなかった。従ってPremiere Pro内のエクスポートからレンダリングを行っている。
まずM1ネイティブ版βだが、レンダリングにかかった時間は8分19秒。実時間よりもだいぶ時間がかかっていることになる。もっともエンコーダは、各社の設計思想が如実に出る部分であり、時間がかかってもきれいにエンコードした方がよいとする考え方もある。ただ他の編集ツールのM1パフォーマンスからすると、かなり遅く感じられる。
アクティビティモニタでレンダリング中のパフォーマンスをチェックしたところ、CPUの利用率は600%越えで、かなりの部分をCPUで回しているように思われる。一方GPUの利用率は90%程度で、これは他社と同程度だ。これだけのリソースを注ぎ込んでも速度が上がらないということは、まだエンコーダ内部で最適化が完了していないボトルネックが相当あるのではないかと思う。
一方同じプロジェクトをIntel版でもレンダリングしてみたところ、12分48秒であった。M1の方が約40%ほど高速ということになるが、現行バージョンでもレンダリングはかなり遅いように思える。ただPremiere Proの場合、以前から素材と出力コーデックの組み合わせによって、なぜか他の組み合わせよりもエンコードが遅いことが時々ある。今回はたまたまその組み合わせに合致したとも考えられる。
アクティビティモニタでレンダリング中の様子を観察したところ、CPUとGPUの利用率は、M1版とあまり変わらなかった。仮にM1でのパフォーマンスをもっと上げようとするならば、Intel版バイナリとは違った考え方でエンコーダを設計し直す必要がありそうだ。なお参考までに、今回制作した動画はここで視聴できる。
Premiere Proは2019年11月にバージョン14へメジャーアップデートしたばかりで、これまでだとメジャーアップデートは3〜4年に1回である。したがってM1対応とはいっても、メジャーアップデートが行われる可能性は小さく、バージョン14のままで細かく刻んでいくことになるだろう。M1バイナリの正規版リリースはまだ具体的な日程が出てきていないが、現状のβ版でのパフォーマンスからすると、内部的にはかなり手を入れる必要がありそうだ。
現時点でのM1バイナリは、ちょこっと試してみるぐらいならともかく、本格的に使うなら正規版のリリースを待った方が無難であろう。
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