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月にふるさとの味を“転送”──フードテックベンチャーが目指す「調味料プリンタ」の可能性食いしん坊ライター&編集が行く! フードテックの世界(2/2 ページ)

» 2021年01月26日 12時40分 公開
[武者良太ITmedia]
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ふるさとの味を月面へ“転送”

 こうした地上での実用化と並行し、月面基地でも稼働するcolonyの開発にも大手企業などと協力して着手する。重力の少ない場所でも動かすことはできるのだろうか。

 「月面は地球の6分の1の重力があるため、仕組み上は地上で使うものとあまり変わらないものを想定しています」と岡田さん。colonyは複数の調味料のタンクが入ったカートリッジを本体に装着し、コンピュータで制御したポンプを動かして調味料を出力する。重力の低い場所であっても調味料を押し出せると考えているそうだ。

 「ただ、使われるパーツは異なるでしょう。地上用は安価でメンテナンスしやすく、世界中で使えるようにするため、どこでも調達しやすい汎用部品を使っていますが、月面やISSといった極地空間でそのまま使えるかどうかは分かりません。その辺りは、宇宙のプロフェッショナルの方たちと設計していきます」

 “月面colony”が実現すれば、地球にいる家族と同じ料理をリアルタイムで食べることも可能になるだろう。岡田さんは「月で食べものを生産し消費する月産月消の時代を想定すると、地球と同じ味を楽しめるcolonyは価値があるのではと考えています」と期待を込める。

“不完全”だからこそ一手間が必要

 今後の展開に夢が広がるcolonyだが、扱う調味料によっては人手が必要なこともある。ドレッシングのように酢と油を出す場合、最終的にはユーザーが振って乳化させる必要があるのだ。

 「colonyで調理の選択肢は広がります。でも全てのメニューをカバーすることは目指しておらず、いわば“不完全”な調理家電です」

 使用できる調味料は液体もしくは粘体の調味料。パウダーや塩の粒のような乾燥した調味料は現状使えない。代わりに塩水を使うなど塩味のコントロールはできるが、乾燥調味料でなければ作れない料理の味付けは難しい。

 「ロボットアームをつけてコショウをミルでひく仕組みはできますが、価格が数十万〜数百万単位で高くなります。どこでも手軽に使われることを目指すcolonyには、現実的ではありません」


 単体で使うことはもちろんだが、他社の家電も併用して料理を完成させたり、既存のミールキットに一味加えたりといった活用も想定するという。個人的にミールキットとの相性は高いとみた。それこそコンビニでも扱われているミールキットやカット野菜をおいしく食べられる調味料となれば、その手軽さに注目度は大いに高まるはずだ。

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