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オープンな雑談の場を脅かす“迷惑系Clubhouser” Clubhouseのリスクを考える(2/2 ページ)

» 2021年02月12日 10時29分 公開
[小寺信良ITmedia]
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Clubhouseのリスク

 ただこのClubhouse、すでに中毒のように入り浸る人と、始めたものの何か違うなと距離を置き始める人に分かれはじめている。リアルタイムコミュニケーションは時間泥棒なので、人や職種としての向き不向きはあるだろう。

 Clubhouseに向くのは、ながら聴きで別の作業が出来る人や職種である。ラジオを聞きながら仕事するみたいな人も多いと思うが、そういう人や職種はClubhouseにはなじみやすい。

 一方Clubhouseに向かないのは、人の声が入ってくると集中できないタイプの人や職種だ。筆者がモノカキ業務を行なう時は頭の中で文章を考えているので、耳から人のしゃべりが入ってくると集中できない。なのでClubhouseのながら聴きで原稿を書くことはない。

 ただ、CG制作やグラフィカルな仕事をしているときは、もともとテレビやラジオを付けっぱなしでも平気だったので、Clubhouseも平気である。人によるというよりは、作業中の脳の使い方、言語野を使っている作業かどうかという違いは大きいと思う。

 こうした理由ではなく、日本のClubhouseシーンの方向性に危機感を覚えている人もいる。例えば、現在のClubhouse内にはしゃべりをマネタイズする仕組みがないが、謎の錬金術大公開Roomとか、自己啓発系セミナーみたいなものに人がたくさん集まってる。そんな現状を、気味が悪いとか問題があるんじゃないかなど、いろんな思いがあるようだ。

 タレントのように名前が売れている人も、降臨してくれればわれわれは楽しいが、本人には悩みがあるようだ。集客力は絶大だが、いろんなことに興味があっても、どのルームに入ったかがフォロワーにトラッキングされるのはプラスに働かない場合もある。メディア出演でもないのに、常にタレントとしてのポジションで、決まったスタンスの発言が求められるのもつらそうだ。

 また、「荒らし」が登場するようになったという報告も見られる。手を上げて発言を求め、雰囲気が悪くなることを言って立ち去るという輩が出てきているという。そういう状況を楽しむという趣味の悪いリスナーが増えれば、「迷惑系Clubhouser」というジャンルが生まれるかもしれない。

 こうした悪意のあるユーザーの行為を事前に止める方法はなく、できるのは個人個人でブロックすることだけだ。またそうした情報をアップデートしながら共有していく仕組みもClubhouse上にはなく、逆にうわさやデマが訂正されずに拡散していく傾向が懸念される。

 もともと雑談は「親睦」と「情報交換」の両方を成立させるものだが、Clubhouseではそれが両極端に振れており、用途が不安定に揺れ動いている。ユーザーも手探りではあるのだが、すでにSNSというシステムの性質を把握している人も多くなっており、先行者利益を得たいイノベーターやハック系ユーザーがあっという間に手垢まみれにしていった感がある。

 今後Clubhouseは、テーマでRoomを探すユーザーと、人でRoomを探すユーザーに二分されそうだ。サービス自体は用途や目的を1つに限定する必要などないのだが、こうした分かれ方というのは、今の社会に足りてないものを象徴する。そしてこれが、さらなる社会の分断を加速してしまうことにならなければいいがと懸念しているところである。

photo 話したい人を指定してRoomをスタートできる
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