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Clubhouse隆盛でふと思う、この道はいつか来た道 Twitterとの共通点・異なる点新連載「デジタル・イエスタデイワンスモア計画」(2/2 ページ)

» 2021年02月16日 13時11分 公開
[甲斐祐樹ITmedia]
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Twitterを超える圧倒的な普及速度

 こうしたTwitterと似た要素が多いClubhouseだが、Twitterと比べて異なる点も見受けられる。

 1つは普及速度、特に芸能人や著名人への普及速度だ。Twitterやブログが流行し始めた頃は芸能人の利用はまだ珍しく、真鍋かをりや中川翔子が「ブログの女王」と称されたり、広瀬香美がTwitterのロゴを読めず「ヒウィッヒヒー」と読んで流行語になるなど、有名人はまだまだ珍しい存在だった。

photo ヒウィッヒヒー

 しかしClubhouseはオープンから1週間もたたないうちにさまざまな有名人が利用を開始し、ニュース番組やワイドショーでも取り上げられはじめた。最近では「有名人のこぼれ話を聞くことができるサービス」としての立ち位置も確立しつつある。

 この違いは、流行前にどれだけSNSが国民に浸透していたかが大きい。前述の通り、Twitterが流行し始めた頃のmixiは1,000万人弱で、招待制でクローズドなSNSということもあり芸能人の利用はそこまで目立ってはいなかった。

 一方、Twitterの国内ユーザーは総務省の調査によれば2020年9月の時点で全世代の40%弱が利用(PDFへのリンク)。日本人口で単純計算すると4900万人近くが利用していることになる。芸能人もTwitterのアカウントを持っていることが普通になっており、Twitterでの発言がニュースになることも日常の光景となった。

 SNSが日本でも当たり前の存在となり、そのプラットフォームの上で展開したからこそ、Clubhouseの急速な流行につながったといえるだろう。

アーカイブが残らないことでFOMOを刺激

 リアルタイム性では共通しているが、Clubhouseではアーカイブが一切残らないのもTwitterとの大きな違いだ。「今しか聞けない」という希少価値は高まる一方、面白いルームや有名人のトークを聞き逃したくない、という機会損失への恐怖や束縛感は、サービスに夢中になればなるほど大きい。昨今のSNSに言われるFOMO(Fear Of Missing Out、見逃すことに対する恐怖感)を強く刺激するのがClubhouseの特徴だろう。

 そうした束縛感に疲れて早々にClubhouseを「飽きた」という人がいる一方、「Clubhouseに住んでいる」と公言するほど夢中になっているユーザーも見かけるなど、リアルタイムならではの中毒性が良くも悪くもClubhouseの個性となっている。リアルタイムでアーカイブされないというClubhouseの特徴が今後の普及にどのような影響を与えるのか、個人的には注目のポイントだ。

配信者の属人性が配信者の最大の武器に

 Clubhouseをコンテンツとして考えた場合、発信者がアピールできるポイントも大きな違いだ。Twitterの場合、自らがコンテンツを発信しなくても、面白いツイートをRTするだけでも人気を集めることができるし、過去のアーカイブが残るために「どんな投稿をするアカウントなのか」が後から把握しやすい。Togetterなどのまとめサービスからフォロワーを増やすというアプローチもあるだろう。

 一方、現状、Clubhouseのルームをアピールしたい場合、個性を出せるのは今のところルームとプロフィール程度しかなく、アピールポイントは「この人の話を聞きたい」という属人性が非常に強い。

 音声に近い動画コンテンツのYouTubeでは、サムネイルで注目を集めたり、最新の製品をいち早く紹介することで再生数を上げているユーザーも多い。そうした注目を集めようとするあまり、過激な話題ばかりを紹介したり、YouTubeには上がっていないテレビ番組をさも公式番組のように見せかけてアップする、といった手法も散見されるほどだ。

 その点、イベントとして行われるClubhouseは「この人の話が聞きたいかどうか」が全てで、編集や演出での勝負が難しい。今後Clubhouseが普及していった際、Clubhouseでのポジションを取るには「話が面白い」か、「うまさに関わらずその人の話を聞きたい」かどうかが重要になるのだろう。

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