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コロナ禍はシェアサイクルに追い風? 事業者同士“相乗り”の動きも 交通シェアリング事情の今(3/3 ページ)

» 2021年02月26日 19時00分 公開
[島田純ITmedia]
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「陣取り合戦」からポートをシェアする動きも

 シェアサイクルは、基本的に事業者ごとにレンタル・返却できるポート(またはステーション)が決まっている。

 このため、需要が高いエリアでは事業者同士の「陣取り合戦」のような現象が発生しているが、シェアサイクルを移動手段として考えると、事業者を問わずにシェアサイクルをレンタル・返却できる方が、利用者としては使いやすい。事業者としても独自にポートを開拓するよりも、他の事業者と相乗りした方が効率的にポートを拡大できる可能性もある。

 そんな中、複数のシェアサイクル事業者がサービスを展開する愛知県名古屋市では、市役所などに隣接して「公共コミュニティサイクルステーション」を設置し、認可された事業者のシェアサイクルを返却できる取り組みを進めている。

名古屋市役所二市庁舎の公共コミュニティサイクルステーション
通常、ポートごとにレンタル・返却できる事業者は限定される

 名古屋市をモデルケースに、事業者同士の相乗りが他の都市でも進めばシェアサイクルをより身近に使えるようになりそうだ。

電動キックボードシェアが一部で商用サービス開始 体験してみて課題も

 シェアサイクル以外の「シェア系」交通手段として、電動キックボードのシェアリングサービスも実証実験が始まっている他、一部エリアで商用サービスもスタートしている。

 日本国内で電動キックボードに乗り走行する場合は原動機付き自転車(いわゆる原付)の扱いとなり、原付免許の携帯やヘルメット着装が必要となる他、車道走行が原則となる。

 筆者も19年の夏に浦和美園駅やその周辺でサービスを展開していた電動キックボードのシェアサービス「WIND」を試してみたが、さまざまな道路環境が混在する日本の公道を走行する手段としては、電動キックボードには課題が多いと感じている。

電動キックボードのシェアサービス「WIND」

 例えばWINDの場合、前述の通り公道(車道)を走る必要があるが、とにかくバランスを崩しやすい。車輪が小さいことから小さな段差で影響を受けるのはもちろん、バックミラーが無いため後方を目視しようと振り返るときもバランスを崩しやすい。ウインカーが搭載されていないため、右左折や停止などのサインを手信号で行う際にも車体がふらついてしまいやすい。「これで車道を走るのは怖い」というのが筆者の率直な印象だ。

WINDの電動キックボードにウインカーは搭載されていない

 日本における道路交通法や道路事情を鑑みると、一般道での走行を前提にするのではなく、自動車が走行することのない私有地や、広い大学のキャンパス内の移動など、限られた地域やエリアで、走行可能な速度を制限した上で利用するのが無難な落とし所のように思う。

 そんな中、電動シェアバイクサービスを手掛けるLuup(東京都渋谷区)など3社が20年10月に認定された「新事業特例制度」では、東京の丸の内エリアなどで電動キックボードによる自転車専用通行帯の走行を可能とする特別措置が21年3月末まで認められるなど、行政と連携した実証実験も進んでいる。

Luupの電動キックボード

 コロナ禍の“順風”で利用者が増えるシェアサイクル。ドコモ・シェアサイクルの場合はUber Eats向けプランが廃止されたことから利用者数にある程度の落ち着きも見られそうだが、コロナの収束が見えない中、ポートシェアなど使いやすい環境が整えば移動手段としての需要は引き続き伸びそうだ。電動キックボードも実証実験を踏まえ、法整備が進めば身近に見る機会もあるだろう。

 近未来の交通風景というと「空飛ぶクルマ」や無人ドローンなど空の交通網を思い浮かべがちだが、意外と地上では二輪車が増えているのかもしれない。

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