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「シン・エヴァ冒頭」に見る現代のテクノロジー 裏表のあるUSB端子はやはりギルティ?(1/4 ページ)

» 2021年03月10日 13時00分 公開
[井上輝一ITmedia]

 コロナ禍による2度の延期を経て、3月8日に公開となった映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。平日の公開でありながら、初日の興行収入は約8億円、観客動員数約53万人と好調なスタートを切った。

 製作会社のカラーは今回、公開初日の午前0時に作品の冒頭部分「シン・エヴァンゲリオン劇場版 冒頭12分10秒10コマ」をYouTubeとAmazonプライム・ビデオで公開した。Amazonプライム・ビデオでは3月21日までアーカイブを公開するとしている。

 本記事では、本編のネタバレを回避しつつも「シン・エヴァ」に登場するテクノロジーについて理解を深めるべく、現在公開中の冒頭部分に描かれた内容を考察していく(前作までのネタバレはするので、それも回避したいならここでブラウザバックを)。

Amazonプライム・ビデオでは3月21日までアーカイブを公開中

そもそも本編の西暦はいつか

 内容に入る前に、物語の外観や時代設定について簡単に触れておきたい。作中の描写と現実世界との関連性についてある程度の指標になるからだ。知っている人は読み飛ばしてOK。

 エヴァンゲリオンの物語は、「使徒」と呼ばれる異形の生命体が日本の箱根に侵攻するところから始まる。使徒の目的は、箱根の地下深くに眠る「リリス」という使徒と接触して「サードインパクト」という事象を起こし、現在の地球上にいる他の生命を滅ぼすこと。これを「汎用人型決戦兵器 人造人間エヴァンゲリオン」を使って阻止しようとする組織が、主人公の碇シンジなどが属する特務機関NERV(ネルフ)だ。

 新劇場版は「序」「破」「Q」「シン」からなる4部作で、「破」ではシンジの行動が結果としてサードインパクト(に近いもの)を起こしてしまう(直後に阻止されたが)。

 「Q」では、サードインパクトの影響で14年間眠ったままだったシンジが眠りから覚め、自分が起こしてしまったサード後の世界を目の当たりにしてうろたえる。そして、この世界をやり直すため行動した結果、今度は「フォースインパクト」を起こしてしまう。しかもこれを止めるために隣で友人が爆死。

 やることなすことが裏目に出て取り返しがつかず、シンジが絶望や無気力にさいなまれるところ、同じくエヴァのパイロットである式波・アスカ・ラングレーがシンジをエントリープラグ(要するにエヴァのコックピット)から連れ出して赤い大地を歩き始める。

Qとシンは序と破の14年後だが……?

 「シン」の冒頭は、年表としては「Q」の直後となる(※)。公開中の冒頭では、フランス・パリでエヴァ8号機βと敵側のエヴァがバトルするシーンと、「Q」から引き続きシンジたちが赤い大地を歩くシーンが映し出されている。

※シン・エヴァ冒頭でリツコが「16年ぶりのパリ」と発言しているが、16年前が序・破と同時期に当たるのかは不明

 「序」と「破」もほぼ同じ時間を継続的に描いていることから、西暦XXXX年(序、破)→西暦XXXX+14年(Q、シン)という順序になっていることはまず分かる。

 「序」「破」が描く時代はほぼ現代のはずだが、実は新劇場版については筆者が調べた限りでははっきりとしない。1997年に公開された旧劇場版(新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に)やそれにつながるテレビアニメシリーズでは、使徒の襲来が2015年と明言されており、その15年前である2000年には大災害「セカンドインパクト」があったとされている。

 仮に旧劇場版の年表を当てはめると、2000年にセカンドインパクトが起きて人類の半数が滅び、2015年にサードインパクトが起きてさらに滅び、2029年が本作の舞台ということになる。

 ただし、「破」にはNERVの戦闘指揮官である葛城ミサトが、取っ手が付いたデザインが特徴であるパナソニックのノートPC「Let'snote F8」(2008年発売)を自身のPCとして使うシーンがある。“外”の世界の事情としては、「破」は2009年の公開であり、エヴァとパナソニックがコラボを行っていたことからLet'snote F8が登場することに不思議はない。しかし、エヴァの世界においてもLet'snote F8が同じ時期に発売されたとすれば、ミサトは7年前のモデルを使っていたことになる。

パナソニックのノートPC「Let'snote F8」

 もっとも、セカンドインパクトの影響でパナソニックにも開発に遅れが発生した可能性は大いにあり、作中の2015年でもLet'snote F8が最新モデルだったとも考えられる。あるいは「破」の西暦を2015年とするのが間違いで、実はもう何年か前なのかもしれない。

 いずれにしても「細けえことは気にすんな」と言ってしまうとそれまでだが、作中と現実世界で多少の齟齬(そご)があることは考えられるものの、作中に出てくる技術や製品の一部は現実にかなり沿っているという前提で話を進めたい。

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