このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
英インペリアル・カレッジ・ロンドン(ICL)の研究チームが開発した「Unmanned Aerial Sensor Placement for Cluttered Environments」は、ドローンを用い、ダーツで使用するような矢を空中からターゲットに命中させるシステムだ。人が入り込むには危険な場所でセンサーを取り付ける際などに活用できるという。
今回のドローンシステムの重量は合計650g、1回の充電で最大17回の発射が可能。ターゲットから最大4メートルの距離で、30gのセンサーをプラスマイナス10cmの精度で命中させる。
発射システムは、形状記憶合金のトリガーとバネを中心に構成。バネを収縮させその先にセンサーを配置、発射時にトリガーを解除する。
実験は屋内外の環境で行い、80回以上成功した。屋内実験では、モーションキャプチャーシステムによってドローンとターゲットの位置を捉え、最適な発射位置にドローンを自動配置、方向を決定し実行した。
屋外実験では、室内と違い複雑なモーションキャプチャーシステムを使用できず、森林地帯では樹木が密集しているためGPS信号も利用できない。そこで、ドローン周囲の環境を捉え、周囲との相対的な位置に基づいて自分の位置をリアルタイムに把握する視覚慣性オドメトリ(VIO)を使用した。
深度センサーを加えることで、ターゲットとの距離を計測して発射位置計算、どこに命中したかの結果情報を基にした測距や弾道補正など、今後の精度向上に活用できるという。
無線センサーネットワークを構築する際に、野外の高い場所にセンサーを設置するなどの活躍も期待できるとしている。
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