ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説する新連載「分かりにくいけれど面白いモノたち」。第1回は、最近、タブレットとペンの組み合わせでも重視され始めている「書き心地」について。ツルツル、さらさら、ザラザラという3種類の用紙と3種類のペンを組み合わせたらどうなるのか。
コクヨの「PERPANEP」(ペルパネプ)は、質感が異なる3種類の紙を使ったノートと、万年筆、ボールペン、サインペンの筆記具3種類による、新しいブランドです。この唱えると何かが起こりそうな呪文のような、新しいオノマトペのようなブランド名は、PENとPAPERのアナグラムによるもの。つまり、紙と筆記具のコンビネーションのブランドなのです。
「書き心地」という言葉があります。これが何とも曖昧な表現で、例えば「とても書き心地が良いペンです」という文章は、なんとなく分かるようで全然分かりません。それは、書き心地という言葉自体に具体性が何も無いからです。それは、例えば高級キーボードに対する「打鍵感」という言葉にも通じるものがあります。「打鍵感が最高」という言葉も書き心地と同じように具体性がありません。打鍵感の何が最高なのかが書かれていないからです。
例えば「筆記時の手に伝わる感触が気持ち良い」というようなことを「書き心地が良い」と表現しているとしましょう。では、その気持ち良さというのは、どういう文字をどんな紙に、どんな風に書いた時の感触なのでしょう。太字のインクフローが良い万年筆ですべすべの紙に、大きな文字を書くと、確かに手に伝わる感触はぬらぬらととても心地よいものです。低粘度油性インクのボールペンや水性ボールペンの太字で大きな文字を書くのも、スイスイとペンが走って気持ち良い感触です。
ただ、それは、そういう限定した範囲の中でのことで、太字のぬらぬら書ける万年筆で、小さな手帳に書き込もうとすると、結構ストレスが溜まったり、滑らかすぎるボールペンでは滑りすぎて正確な線を引くのが難しかったりもします。つまり、書き心地というのは、筆記具が違っても、紙が違っても、何を書くかによっても、どう書くかによっても、もっといえば、気分によっても違ってきます。
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